過去のお知らせ <消費税>

【ご相談事例】税務署から還付不可と指摘された
2018年05月10日

【ご相談内容】
 当社は資本金1000万円の合同会社です。設立第1期目の売上は800万円程、第2期目は850万円程度でした。消費税については、2期とも納税しています。
 先日、第3期目の消費税確定申告書を税務署に提出しました。第3期では沖縄振興開発金融公庫から資金を調達し、工場に新たな機械を導入しました。その結果、第3期確定申告では還付申告になりました。
 ところが昨日税務署から還付は不可と指摘されてしまいました。理由が理解できません。なにがいけなかったのか、そして今後どうすればよいのかをご教示ください。ちなみに税務署へは消費税関係の届出書、申請書は提出したことがありません。
 第4期目である今期も追加で機械を購入する予定です。これで漸くフル操業できる見通しなのですが…、消費税の事でノイローゼになりそうです。

【結論】

  • 1. 設立第1期目の売上高が1000万円未満のため、第3期目は免税事業者となり、今回のケースでは第3期目の消費税還付は不可です。
  • 2. 設立第2期目の売上高も1000万円未満ということですので、設立第4期目についても、第4期開始日前日までに「消費税課税事業者選択届出書」を所轄税務署に提出していないため、仕入税額控除が預かり消費税以上であっても消費税還付は不可です。
  • 3. 上記2については、可能であるならばその機械の購入を第5期へ延期し、今期(第4期)末日までに「消費税課税事業者選択届出書」を提出することを検討してください。
  • 4. 上記3について、新設備購入の来期への延期が難しい場合には、「消費税課税期間特例選択・変更届出書」を税務署に提出し、次期課税期間を前倒しする方法についても検討の余地があるでしょう。

【解説】
 実は、今回の様なご相談は当事務所で年数回はお受けする内容です。
 設備投資に関わる消費税の還付不可事案の場合、損害額が数千万円にも及ぶ事例も少なくありません。消費税は、確定申告書作成自体が比較的簡単であるため、全体を甘く見てしまいがちなのですが、計算の背後にあるルールは複雑、かつ、遡っての修正不可、という点に留意が必要です。

 今回は、残念ながら消費税に関する典型的な失敗です。そして、この失敗を理解するキーワードは、「新設法人」と「消費税の新設法人」です。

 まず、「消費税の新設法人」とは、「基準期間がない事業年度の開始の日における資本金の額又は出資の金額が1000万円以上である法人」です。つまり、新たに設立した法人が資本金1000万円以上=「消費税の新設法人」ということ。したがって、「新設法人」は、「消費税の新設法人」以外の法人ということになります。そして、「消費税の新設法人」の留意点は次になります。

  • ● 設立第1期、第2期目までは消費税の納税義務があるということ→第3期目以降は「新設法人」と同様。

 資本金1000万円以上で法人を設立すれば、設立初年度から消費税の納税義務があることはよく知られていることです。しかし、資本金1000万円以上の法人が、永遠に課税事業者であるとの誤解がこのご相談者の失敗の原因でした。
 つまり、3期目以降は「新設法人」と何ら変わりはなく、第3期目で消費税の還付をするのであれば、このご相談例では第1期目の課税売上高が1000万円以下だったので、消費税課税事業者選択届出書を第3期目の事業年度が開始する前日までに税務署に提出する必要がありました。

 このような失敗を回復する手段がないわけではありません。それは、「消費税課税期間特例選択届出書」を提出して、消費税の課税期間を最短で次月に変更し、当月末までに消費税課税事業者選択届出書を提出すれば、次月が「次期課税期間」となり、失敗のダメージを最小限にできる可能性があります。但し、そもそも当該課税資産を購入済みの場合には、課税期間特例を適用しても損害の回復はできません。
 尚、消費税課税期間特例を適用するとその後の様々な煩雑さ、消費税の資金繰りに与える影響(最短で毎月消費税を納税することになる)といった副作用が出ますので、適用に当たっては事前に税理士へのご相談をお勧めします。

消費税節税の基礎知識(第2回目 開業初年度の還付)
2018年04月07日

 宿題を出してから1年半も経ってしまいました。再開します。
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【宿題】再掲
 パン屋さんは、開業初年度だったのでいろいろお金がかかってしまい、決算をしたら次のようになりました。

  • 売上2,160,000円
  • 経費2,700,000円(仕入や光熱費等の消費税がかかっていたものだけ)
  • パン製造設備の購入5,400,000円

 パン屋のオーナーは思いました。「赤字だけど開業初年度としてはまずまずだな。味についてもお客さんからの評判は上々だし、次期以降は期待が持てそう。パン製造設備も公庫からの借入金で買えたので資金繰りも問題なし。気になる消費税についても開業後2年間は面倒くさい申告も免除だってネットでみたし…、ラッキーだな~」

 本当にそうでしょうか。
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 まず、消費税計算式のおさらいです。
【お客様から預かった消費税-経費で支払った消費税=税務署に納める消費税】

 このパン屋さんは、開業初年度の消費税を還付(税務署から返金)してもらうことができました。還付金額は次のとおり。

  • 売上に含まれる消費税      160,000円
  • 経費に含まれる消費税     ▲200,000円
  • パン製造設備に含まれる消費税 ▲400,000円
  • 還付される消費税        440,000円

 但し、還付を受けるためには、その開業の年の12月31日まで(例えば開業が平成30年7月の場合、平成30年12月31日まで。法人であれば設立第1期事業年度終了日まで。)に「消費税課税事業者選択届出書」を税務署に提出する必要があります。つまり、自ら進んで消費税課税事業者にならなければなりません。
 ちなみに、これは開業初年度の特例であって、原則は事業年度開始の前日まで(例えば、平成30年の事業であれば、平成29年12月31日まで)に「消費税課税事業者選択届出書」を提出します。

 また、「消費税課税事業者選択届出書」を提出すると、その後の2事業年度は免税事業者に戻れないので、この2事業年度の売上、経費、固定資産の購入についても十分シミュレーションの上、意思決定する必要はあります。

 今回のパン屋さんのような失敗例は、実際のところ非常に多く見受けられます。残念なことに、最近当事務所に相談に来られた方でも消費税の取扱いを誤り、資金繰りに困ってしまう事例(太陽光発電事業)がありました。注意してください。

消費税節税の基礎知識(はじめに)
2016年10月28日

 消費税確定申告の計算式は次のようにとってもシンプルです。
【お客様から預かった消費税-経費に支払った消費税=確定申告をして税務署に納める消費税】

 例えば、パン屋さんが108円で販売した場合には8円が「お客様から預かった消費税」。一方、材料の仕入れやお店の光熱費等で54円を支払った場合には4円が「経費に支払った消費税」です。8円-4円=4円、この差額が「確定申告をして税務署に納める消費税」となります。

 表面的にシンプルなものほど往々にして中身は複雑です。消費税にもそのような側面があると言えるでしょう。そもそも消費税に関してどのような法人や個人事業主が確定申告と納税の義務があるのでしょうか。消費税の納税義務がないとすれば、本来確定申告をして税務署に納めるべき消費税は誰のものになるのでしょうか。答えは「消費税を預かった法人や個人事業主のものとなる」です。これが消費税の益税問題です。
 このような消費税の納税義務がない場合について、国税庁のホームページで次のように解説していますのでご紹介します(ここでは注釈等を省略しています)。納税義務の免除規定は中身が複雑な消費税の構造の中では、比較的単純な部品の一つと言えるでしょう。ご一読ください。

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 消費税では、その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者は、納税の義務が免除されます。
 この納税の義務が免除される事業者(以下「免税事業者」といいます。)となるか否かを判定する基準期間における課税売上高とは、個人事業者の場合は原則として前々年の課税売上高のことをいい、法人の場合は原則として前々事業年度の課税売上高のことをいいます。なお、基準期間が1年でない法人の場合は、原則として、1年相当に換算した金額により判定することとされています。具体的には、基準期間中の課税売上高を、基準期間に含まれる事業年度の月数で割った額に12を掛けて計算した金額により判定します。
 課税売上高は、輸出などの免税取引を含め、返品、値引き、割戻しをした対価の返還等の金額を差し引いた額(税抜き)です。
 なお、基準期間において免税事業者であった場合には、その基準期間中の課税売上高には、消費税が含まれていませんから、基準期間における課税売上高を計算するときには税抜きの処理は行いません。
 新たに設立された法人については、設立1期目及び2期目の基準期間はありませんので、原則として納税義務が免除されます。
 しかし、基準期間のない事業年度であってもその事業年度の開始の日における資本金の額又は出資の金額が、1,000万円以上である場合や特定新規設立法人に該当する場合は、納税義務は免除されません。
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 いかがでしたでしょうか。ほとんどの方が「内容は何となく理解できるけど、専門用語と、数字や計算が入ったらちんぷんかんぷん…」だと思います。でも心配しないでください。だから、我々税理士が皆様の合法的な節税のお手伝いをさせて頂くのです。

 これから数回にわたって「消費税節税の基礎知識」をアップしていきますのでご期待ください。次回は「消費税の還付」についてです。次回までに次の宿題をしていただくと一層理解が深まるでしょう。

【宿題】
 パン屋さんは、開業初年度だったのでいろいろお金がかかってしまい、決算をしたら次のようになりました。

  • 売上2,160,000円
  • 経費2,700,000円(仕入や光熱費等の消費税がかかっていたものだけ)
  • パン製造設備の購入5,400,000円

 パン屋のオーナーは思いました。「赤字だけど開業初年度としてはまずまずだな。味についてもお客さんからの評判は上々だし、次期以降は期待が持てそう。パン製造設備も公庫からの借入金で買えたので資金繰りも問題なし。気になる消費税についても開業後2年間は面倒くさい確定申告も免除だってネットでみたし…、ラッキーだな~」

 本当にそうでしょうか。

建物賃貸借契約書or土地賃貸借契約書?
2016年08月24日

 土地の貸付けは消費税の課税対象となりません(非課税取引)。一方、建物の貸付けの場合は消費税が課税されます(課税取引)。それでは建物付き土地の貸付けは非課税取引でしょうか、課税取引でしょうか。答えは課税取引です。この場合、賃料を土地部分と建物部分とに区分している場合であっても、その総額が建物の貸付けの対価として取り扱うことになります。
 それでは社長所有の不動産を自分が所有する法人に貸付けるとしましょう。書類だけ作ればOK!と考え、安易にネットから契約書の雛形をダウンロードして使用したということはありませんか。個人が免税事業者で法人が課税事業者の場合には、個人と法人の消費税額の合計が建物賃貸借契約と土地賃貸借契約とでは異なります。それが、下記に示した消費税の▲74,074円です。

chintaikeiyaku

 上記2の場合、▲74,074円は法人が納税する消費税から引き算されます。つまり、法人の事業全体から計算された納税すべき消費税から74,074円を控除(仕入税額控除)することかできるわけです。
 もちろん税金を安くしたいという理由で書類(法形式)だけを整えれば良いのではなく、実態がどうであるかを契約に反映させるのは当然のことですが、土地に建物を建てるかどうかという意思決定に消費税法が影響を与える面があることは否めないでしょう。
 例えば、社長個人が所有する遊休地を法人に資材置き場として貸そうとするにあたっては、建物内にその資材を置くのか、雨ざらしにするのかについては、その資材の種類、使途、価値、さらに建物の建設費を熟慮して判断するに違いありません。この判断をするときに経営者には税金費用のことも是非考えて頂きたいのです。
 このように、経営の意思決定に税金が関係する場面は多くあります。金額の大きい買い物や投資をする場合には、専門家への事前相談が大切となるでしょう。

【参考法令等】
消費税法施行令
(土地の貸付けから除外される場合)
第八条 法別表第一第一号に規定する政令で定める場合は、同号に規定する土地の貸付けに係る期間が一月に満たない場合及び駐車場その他の施設の利用に伴って土地が使用される場合とする。 

消費税法基本通達
(土地付建物等の貸付け)
6-1-5 令第8条《土地の貸付けから除外される場合》の規定により、施設の利用に伴って土地が使用される場合のその土地を使用させる行為は土地の貸付けから除かれるから、例えば、建物、野球場、プール又はテニスコート等の施設の利用が土地の使用を伴うことになるとしても、その土地の使用は、土地の貸付けに含まれないことに留意する。
(注)
1 事業者が駐車場又は駐輪場として土地を利用させた場合において、その土地につき駐車場又は駐輪場としての用途に応じる地面の整備又はフェンス、区画、建物の設置等をしていないとき(駐車又は駐輪に係る車両又は自転車の管理をしている場合を除く。)は、その土地の使用は、土地の貸付けに含まれる。
2 建物その他の施設の貸付け又は役務の提供(以下6-1-5において「建物の貸付け等」という。)に伴って土地を使用させた場合において、建物の貸付け等に係る対価と土地の貸付けに係る対価とに区分しているときであっても、その対価の額の合計額が当該建物の貸付け等に係る対価の額となることに留意する。

消費税の軽減税率について
2015年10月15日

 日本経済新聞(2015年10月15日朝刊)によると、10%消費増税時(2017年4月)に食料品に対して軽減税率が適用され、「簡易税額票」が導入されることを政府・与党が検討しているそうです。 税の実務家の間では当初から「簡易税額票」方式が有力案とされていたと思います。このタイミングでの報道は年末の「税制改正大綱」に記載する前振りであることが多いことから、事業者も簡易税額票方式の線で事務の準備を開始すべきでしょう。

  簡易税額票方式を簡単に説明すると、「仕入税額控除(事業者がお客様からお預かりした消費税を税務署に納税する際に、事業者側で引き算できる消費税額のこと)」したいのなら、引き算の証明書として業者が発行した請求書(税額票)を持っていてね」ということです。

 今後の議論の行方について注視しなければならないことは、簡易税額票の内容です。どの程度細かなものになるのか、領収書での代用が認められるのか等々。いずれにしましても、今後は消費税の税務調査の際に、税務調査官から簡易税額票原本の提示を求められることは必須でしょう。なぜならば、簡易税額表の確認をしないと、どの仕入税額控除(引き算)が軽減税率の対象で、どれが対象でないのかが確認できないからです。極端な例では、全部の仕入を10%にして、お客様からお預かりした消費税は軽減税率対象商品(例えば7%)とすれば、引き算が多過ぎで結果として納税額が減ることになるからです。

 当事務所では、今後も消費税軽減税率に関する実務についてタイムリーに解説し、そして関与先の皆様には優しく(笑)ご指導させていただきます。