過去のお知らせ <法人税>

【ご相談事例】タダであげた土地なのに売上げに計上するの?
2016年12月08日

【ご相談内容】
 私が社長を務める法人から、友人が社長を務める法人に土地を無償譲渡しました。彼とは幼馴染で、昔当社が資金繰りに困ったときに親身になって助けてくれました。今回の土地の贈与はその時の恩返しのつもりです。
 タダであげたので当然当社には何の利益も発生しません。したがって当社の経理事務員は贈与した土地の帳簿価額を損金に計上し、法人の資産台帳から消しました。
 数日後、当社の顧問会計事務所が定期巡回監査で当社に訪れた際、その担当者から「贈与した土地は時価で未収入金に計上してください。贈与した土地は時価で寄付金として処理します。御社の場合はこの寄付金の一部しか税務上の経費になりません。」と指摘されました。土地をタダであげて何のお金も入ってこないのに税金だけ取られることが解せないのでその理由を担当者に尋ねたところ、「経理や税務はそういうものなのです!社長、もっと勉強してください。」と怒られてしまいました。勉強しようと思って質問したのに…。
 こちらの事務所は顧問契約を結んでいなくても相談を聞いて頂けると知って訪れました。ご教示お願いします。

【結論】
 御社の顧問会計事務所の担当者が指摘された経理処理、それ自体は正しいと思われます。しかし、ご相談者が言われるように「理由」を知ることはとても大切なことです。理由によってはご友人に対するもっと良い恩返しの方法があるかもしれません。例えば、贈与の代わりに土地の時価相当分を貸してあげることも検討する余地があるでしょう。そうすれば大切なご友人に、贈与だったら納税する税金分も恩返しすることができるからです。

【解説】
 ご相談内容に関しましては、会計や税務の専門家であれば違和感のない取引ですが、一般的には大いに違和感があるのではないでしょうか。
 この違和感の理由は簿記のルール(企業会計原則)の「総額主義」にあります。総額主義とは、「費用及び収益は、総額によって記載する(仕訳をする)ことを原則とし、費用の項目と収益の項目とを直接に相殺することによってその全部又は一部を損益計算書から除去してはならない。」というもの。つまり、「経理処理は端折ってはダメですよ」という約束事です。そして税法(法人税法第22条2項、同4項)は無償による資産の譲渡を総額主義で経理することを強行法規として規定しています。
 さて、この総額主義で厄介なのが、分解した取引のいずれかが他の税法規定に抵触する場合でしょう。今回の場合はご友人の法人に贈与する行為は「寄付」になってしまい、「寄付金の損金不算入(法人税法第37条)」という別の納税者不利の規定が適用されてしまいます。
 ご参考までに仕訳例をお示ししましょう。

➀(借方)未収入金 500 (貸方)土地   100
                譲渡益   400 
                     ↑
                利益=課税される

②(借方)寄付金  500 (貸方)未収入金 500
          ↑
 全額は税務上の経費にならない=課税される

商品券購入費用が経費にならない!?(法人税法)
2016年07月04日

 日頃お世話になっているお礼として、取引先等に商品券を配布するのはよくあることでしょう。配布商品券は、決算までに配布すると予定されている場合には購入時に経費処理、決算期末をまたぐ場合は未配布商品券を貯蔵品として貸借処理し、配布時に経費処理をします。いずれにしても事業者は「商品券配布先リスト」を作成して管理している筈です。
 この「商品券配布先リスト」の記載内容と信憑性を巡って税務署が配布商品券の損金性を否認し、裁判でも税務署が勝訴した事件をご紹介します

1. 法人税法の考え方
 法人が支出する経費は、当然に「業務との関連性」がなければ税務上の経費(損金)に算入することはできません。損金は製造原価のように業務との関連性が比較的分かりやすいものから、販売費や一般管理費のようにその支出の範囲が比較的広いものまで様々です。
 パン製造販売業を例にご説明しましょう。小麦やバターなどの原材料はパンの製造原価であり、基本的に事業関連性を疑う余地はありません。一方、同級生でもある取引先の小売店の担当者に対して、いつもお世話になっているお礼としてお食事にご招待したとしましょう。その経費は交際費として「業務との関連性」があるのか、旧知の同級生との交友を深めるためであるのか、判断が微妙になってきます(実際はこのようなケースであれば仕事とプライベートは混然一体としているのだと思います)。ちなみに税理士や税務調査官、裁判官が証拠や心証に基づいてこのような判断をすることを事実認定といいます。また、費途が明らかでない支出(費途が明らかでなければ事業関連性の有無すら認定できません)については、法人税法上使途不明金(法人税法基本通達9-7-20)となります。
 次に、法人が取引先に配布した商品券は交際費ではなく使途不明金であると税務署が認定し、納税者が提訴した訴訟の判決要旨(原告納税者敗訴)です。

2. 判決要旨(水戸地方裁判所 平成25年(行ウ)第22号 平成27年1月29日判決 原告納税者が東京高等裁判所に控訴)
 会社 が提出した商品券配布先リストについて裁判所は次の事実認定を行い、納税者の訴えを退けました。

  • (ア)配布先に対して何枚の商品券を配布したのか明らかでない
  • (イ)配布先との具体的関連性が明らかでない
  • (ウ)個々の配布先に対する配布金額等が明らかにされていない
  • (エ)そもそもこの配布リストが客観性に欠け、信用性が低い

 この判決要旨から、「法人がどのような資料を用意すれば商品券購入費用が損金となるのか」を推測することができるでしょう。
 商品券購入費用に関してこのような情報を網羅した「商品券配布先リスト」を法人が事前に作成することが、納税者と税務署とのやり取りによって生じる余計な手間と費用をかけない最善の方策だと思います。ちなみに、疎明資料作成の有用性に関しては商品券購入費用に限ったことではなく、税務調査での冤罪 を防止する有効な手立てといえるでしょう。

使途秘匿金等への課税
2016年01月28日

 顧問先の経理担当の方からしばしばお受けする質問が、支払先や使途がわからない(本当は知っているが組織の一員として帳簿に記載できない)支出の経理処理です。このような支出は懲罰的な高い税金が課されること、また、税務調査の現場で調査官と議論になる論点として税理士なら誰でも要注意事項として警戒する支出でしょう。
 実務において、「使途秘匿金」と「費途不明の交際費」とを混乱している事例が散見されますので整理したいと思います。

● 使途秘匿金(租税特別措置法第62条)
法人がした金銭の支出のうち、相当の理由がなく、その相手方の氏名又は名称及び住所又は所在地並びにその事由を当該法人の帳簿書類に記載していないものを言います。支払った目的はおろか、支払先さえも不明な支出です。
ペナルティとして、損金として認められない上に、使途秘匿金額の40%が法人税とは別に課されます。


● 費途不明の交際費(法人税法基本通達9-7-20)
法人が交際費、機密費、接待費等の名義をもって支出した金銭でその費途が明らかでないものをいいます。支払先は領収書等に記載されているのですが、支払の目的等が記載されていない支出です。
ペナルティとして、損金不算入処分になります。事業に使ったものなのかよくわからないため損金としては認められません。

 上記のようなよくわからない伝票に遭遇した経理担当者は、まず次のことを考えます(考える筈ですね)。

  • •  使途秘匿金として経理処理すべきか?
  • •  不課税取引なので仕入税額控除は当然受けられない…。消費税申告上も損なのではないか?
  • •  使途秘匿金は税務上罰金的な課税を受けるのか?
  • •  社長の指示で支出されたのだから、役員給与(賞与)で処理できないか?
  • •  役員給与(賞与)で処理した場合は、役員給与の損金不算入規定に該当しないか?
  • •  役員給与(賞与)で処理したとしても源泉徴収漏れが発生してしまうのか?
  • •  使途秘匿金として処理したら税務調査の時に不明朗経理をわざわざ調査官にアピールしているようなもの…、支払先に迷惑がかかることはないのか?

  上記の経理担当者の気付きは全て正解です。

  このように、ベテラン経理担当者ほど使途秘匿金や費途不明の交際費の処理については悩ましいものなのです。そして金額が多額になれば、追加的な税負担や会社の信用の低下によって会社財務に重大な影響を与えることもお見通しでしょう。

【税理士のアドバイス】
 中小企業の実務として、このような支出は実質的には社長に対する貸付金の性格を持つものがほとんどだと思います。なので、役員貸付金として取締役会や株主総会で決定し、議事録を作成するという手続きが肝要であろうと思われます。そして、将来的に社長の報酬を引き上げ、それを原資にして社長が会社に返済する方法が望ましいでしょう。
 金融機関対策として、決算書に「役員貸付金」があることは好ましくないという意見もあるかと思いますが、当職の経験として理由が明らかな役員貸付金であるならば、融資決定にあたって金融機関はその旨考慮しているようです。
 また、経理担当者がこのような進言を上にすることに気が引ける場合は、第三者である顧問税理士が税法及び財務上の論点を社長に説明し承諾を得るという手順を踏むことも一考に値するでしょう。気になることには税理士を使いましょう。

 ちなみに、使途秘匿金等について上に進言したり、税理士に相談したりする経理担当者が在籍する会社は信頼できそうですね。そしてそのような経理担当者を採用した経営者にも当職は敬服します。