過去のお知らせ <法人税>

【ご相談事例】専務と呼ばないで
2018年06月18日

【ご相談内容】
 5年前に優秀な若手Aを営業部長兼取締役に引き上げました。それ以降も営業成績は順調に伸び続けています。
 来期に当社は新たな分野に新規参入を検討しています。その際にはAを統括営業責任者に昇格させ、肩書も営業部長兼専務取締役にする予定です。当然、営業成績に応じてAへのボーナスは弾みますよ。税金的に何か問題がありますか?

【結論】
 問題があります。
 税法では専務や常務等の職制上の地位を有する役員は使用人兼務役員になれません(法人税法第34条6項、法人税法施行令第71条1項二)。したがって、Aさんに支給する金額は全額が役員給与(役員報酬)となることから、法人税法上の制約(役員給与の損金不算入)を受けます。その結果、原則として、実績ベースの賞与や昇給が損金不算入(経費として認められない)となり、法人税等が増加してしまいます。

【解説】
 ここでは専ら税金の観点で、なぜ専務と名乗ることに問題があるのかについて説明しましょう。

1. なぜ、税法は「役員給与」の支給方法に干渉するの?
 平成18年度税制改正で、役員給与について次のような整理をしました。
 「役員給与は実質的に「利益の分配」であり、利益の分配=配当(経費にならない)となるため、役員給与は原則として経費にならない」。
 とはいえ、現実には役員給与にも役員の生活保障的な労務の対価が含まれているという事実、また、法人課税所得に対する恣意性が廃除されているという事実、が満たされる場合には、一定額は例外的に経費にしても差し支えないでしょう、という考え方で設けられた規定が、「定期同額給与」、「事前確定届出給与」、「利益連動給与」でした(3つの給与に関する詳細は省略)。

2. なぜ、代表取締役、専務、常務(以下、代表取締役等)は使用人兼務役員になれないの?
 これは次のように、「会社と従業員(使用人)との関係」、「会社と代表権を持つ役員との関係」を整理するとスッキリします。
 会社からみた使用人は、雇用契約によって労働力を会社に売る第三者(ちなみに従業員が入社時に会社と取交す雇用契約書等には人事部長ではなく、代表取締役の名前が記載されているでしょう)です。一方、代表取締役等は委任契約によって対外的に会社を代表して第三者と取引をする権利を持っています。
 したがって、代表権をもつ専務、常務が、会社から見た第三者である使用人を兼務してしまうと、論理的には「自己取引」が成立してしまいます。
 しかし、代表権のない取締役は、そもそも取引の第三者である使用人と会社として取引ができません。したがって、営業部長(使用人)を兼務する取締役であっても「自己取引」が成立しないため、使用人兼務役員に就任できるわけです。勿論、税務上も役員としての立場と使用人としての立場を整合的に使い分けることが可能になります。
 ちなみに、ここでいう使用人兼務役員とは、役員のうち部長、課長、その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事する者をいいます。

3. 実は、会社法には専務、常務という言葉は存在しない
 法律(会社法)では、単に取締役と代表取締役が区別されているに過ぎません。代表取締役は文字通り第三者に対して会社を代表します。したがって、取引の相手方は会社の代表権を有する者とした取引=会社とした取引となります。
 一方、取締役は会社に対して代表権を有しないので、取締役が独断で行った取引について、原則として会社はその第三者との取引を拒否することができます。

4. 会社法にない専務取締役とか常務取締役の肩書を名乗って、会社もそれを認めている場合にはどうなるの?
 この場合にも対外的には会社の代表権を有する者とした取引=会社とした取引となります。その理由は、旧商法で専務取締役、常務取締役が会社を代表する者として例示されていたため、その名残で現在でも(慣習的に)会社を代表する役員として取り扱われているからです。
 それでは、対外的には一切専務、常務等のいわゆる職制上の地位を示さない場合はどうでしょうか。
 この場合はあくまでも実態がどうなっているかという事実認定の問題だと思いますが、法人税法の役員給与損金不算入の制度主旨を鑑みれば、外部・内部の区別は、あくまでも表面的な判断基準の一つに過ぎず、実質的に自らの給与と法人の課税所得の割合をコントロールできる立場であるのならば、役員給与損金不算入規定が定義する「役員」になるのではないかと思料されます。

 いずれにしましても、明示であるか暗黙であるかを問わず、会社がその役員に専務、常務という呼称を与えるのであれば、税務リスク及び法務リスクが生じるとの認識を持つべきでしょう。

【ご相談事例】生命保険「実質返戻率」のカラクリにご注意
2018年06月13日

【ご相談内容】
 先日、当社の取引銀行から「税金対策になるから」と、ある生命保険の加入を勧められました。銀行の担当者いわく「10年後に解約したときには払い込んだ生命保険の80%をお返しします。そしてこの保険が凄いのは、節税効果を加味した実質返戻率なのです。この表をご覧ください。節税分を考慮したら120%の返戻率になるんです。お得でしょ。」
 先生、本当にこんなおいしい話があるのですか?

【結論】
 ありません。

【解説】
 本業の融資業務が厳しいせいか、最近地方銀行を中心に生命保険の営業が熱心です。そのセールストークで、上記【ご相談内容】と同様のやり取りが、台本の存在をうかがわせるように、当事務所の他の顧問先からも数多く聞いています。
 営業ツールとして保険会社が作成した解約返戻金の予定表には、「単純返戻率」と、下がった法人税額を考慮する「実質返戻率」が表示されています。

 単純返戻率とは、文字通り支払った保険料の内、単純にいくら戻ってくるかの割合です。例えば、支払った保険料100万円、10年後に80万円戻ってくる契約なら、単純返戻率80%の保険です。
 一方、実質返戻率とは、単純返戻率に「経費としての払込み保険金効果」で減った税金を加えた率の事。例えば、支払った保険料100万円、「経費としての払込み保険金効果」で減った税金30万円、10年後に80万円戻ってくる契約なら、実質返戻率は110%((30+80)÷100)です。

 ここで、実質返戻率のトリックは、解約返戻金80万円が戻ってきた事業年度に増加する法人税額が加味されていないこと。つまり、この時に増える税金と保険金支払い時に減った税金は相殺されるというマジックがお分かりいただけたでしょうか。
 したがって、皆さんが生命保険という高い買い物をするときには、実質返戻率ではなく、単純返戻率を冷静に考え、「20%は掛捨て」という認識を持たなければいけません。

 最近は外貨保険、外国信託保険等の複雑な仕組みの保険商品が出回っているようです。為替リスクや法令変更(日本、海外)リスクを持つ金融商品に投資するリスクについて、売る側は十分に説明し、買う側は十分に理解しているのか、当事務所でも疑わしい事例を散見します。
 そもそも個別の節税(税務)相談は税理士法違反です。どんなに良いお薬でも、服薬する量、タイミング、お薬の組み合わせ、そしてそもそも症状に合ったお薬なのかについて、皆さんは医師や薬剤師の免許を持たない者の指導で服薬するでしょうか。
 生命保険も同じです。

【ご相談事例】タダであげた土地なのに売上げに計上するの?
2016年12月08日

【ご相談内容】
 私が社長を務める法人から、友人が社長を務める法人に土地を無償譲渡しました。彼とは幼馴染で、昔当社が資金繰りに困ったときに親身になって助けてくれました。今回の土地の贈与はその時の恩返しのつもりです。
 タダであげたので当然当社には何の利益も発生しません。したがって当社の経理事務員は贈与した土地の帳簿価額を損金に計上し、法人の資産台帳から消しました。
 数日後、当社の顧問会計事務所が定期巡回監査で当社に訪れた際、その担当者から「贈与した土地は時価で未収入金に計上してください。贈与した土地は時価で寄付金として処理します。御社の場合はこの寄付金の一部しか税務上の経費になりません。」と指摘されました。土地をタダであげて何のお金も入ってこないのに税金だけ取られることが解せないのでその理由を担当者に尋ねたところ、「経理や税務はそういうものなのです!社長、もっと勉強してください。」と怒られてしまいました。勉強しようと思って質問したのに…。
 こちらの事務所は顧問契約を結んでいなくても相談を聞いて頂けると知って訪れました。ご教示お願いします。

【結論】
 御社の顧問会計事務所の担当者が指摘された経理処理、それ自体は正しいと思われます。しかし、ご相談者が言われるように「理由」を知ることはとても大切なことです。理由によってはご友人に対するもっと良い恩返しの方法があるかもしれません。例えば、贈与の代わりに土地の時価相当分を貸してあげることも検討する余地があるでしょう。そうすれば大切なご友人に、贈与だったら納税する税金分も恩返しすることができるからです。

【解説】
 ご相談内容に関しましては、会計や税務の専門家であれば違和感のない取引ですが、一般的には大いに違和感があるのではないでしょうか。
 この違和感の理由は簿記のルール(企業会計原則)の「総額主義」にあります。総額主義とは、「費用及び収益は、総額によって記載する(仕訳をする)ことを原則とし、費用の項目と収益の項目とを直接に相殺することによってその全部又は一部を損益計算書から除去してはならない。」というもの。つまり、「経理処理は端折ってはダメですよ」という約束事です。そして税法(法人税法第22条2項、同4項)は無償による資産の譲渡を総額主義で経理することを強行法規として規定しています。
 さて、この総額主義で厄介なのが、分解した取引のいずれかが他の税法規定に抵触する場合でしょう。今回の場合はご友人の法人に贈与する行為は「寄付」になってしまい、「寄付金の損金不算入(法人税法第37条)」という別の納税者不利の規定が適用されてしまいます。
 ご参考までに仕訳例をお示ししましょう。

➀(借方)未収入金 500 (貸方)土地   100
                譲渡益   400 
                     ↑
                利益=課税される

②(借方)寄付金  500 (貸方)未収入金 500
          ↑
 全額は税務上の経費にならない=課税される

商品券購入費用が経費にならない!?(法人税法)
2016年07月04日

 日頃お世話になっているお礼として、取引先等に商品券を配布するのはよくあることでしょう。配布商品券は、決算までに配布すると予定されている場合には購入時に経費処理、決算期末をまたぐ場合は未配布商品券を貯蔵品として貸借処理し、配布時に経費処理をします。いずれにしても事業者は「商品券配布先リスト」を作成して管理している筈です。
 この「商品券配布先リスト」の記載内容と信憑性を巡って税務署が配布商品券の損金性を否認し、裁判でも税務署が勝訴した事件をご紹介します

1. 法人税法の考え方
 法人が支出する経費は、当然に「業務との関連性」がなければ税務上の経費(損金)に算入することはできません。損金は製造原価のように業務との関連性が比較的分かりやすいものから、販売費や一般管理費のようにその支出の範囲が比較的広いものまで様々です。
 パン製造販売業を例にご説明しましょう。小麦やバターなどの原材料はパンの製造原価であり、基本的に事業関連性を疑う余地はありません。一方、同級生でもある取引先の小売店の担当者に対して、いつもお世話になっているお礼としてお食事にご招待したとしましょう。その経費は交際費として「業務との関連性」があるのか、旧知の同級生との交友を深めるためであるのか、判断が微妙になってきます(実際はこのようなケースであれば仕事とプライベートは混然一体としているのだと思います)。ちなみに税理士や税務調査官、裁判官が証拠や心証に基づいてこのような判断をすることを事実認定といいます。また、費途が明らかでない支出(費途が明らかでなければ事業関連性の有無すら認定できません)については、法人税法上使途不明金(法人税法基本通達9-7-20)となります。
 次に、法人が取引先に配布した商品券は交際費ではなく使途不明金であると税務署が認定し、納税者が提訴した訴訟の判決要旨(原告納税者敗訴)です。

2. 判決要旨(水戸地方裁判所 平成25年(行ウ)第22号 平成27年1月29日判決 原告納税者が東京高等裁判所に控訴)
 会社 が提出した商品券配布先リストについて裁判所は次の事実認定を行い、納税者の訴えを退けました。

  • (ア)配布先に対して何枚の商品券を配布したのか明らかでない
  • (イ)配布先との具体的関連性が明らかでない
  • (ウ)個々の配布先に対する配布金額等が明らかにされていない
  • (エ)そもそもこの配布リストが客観性に欠け、信用性が低い

 この判決要旨から、「法人がどのような資料を用意すれば商品券購入費用が損金となるのか」を推測することができるでしょう。
 商品券購入費用に関してこのような情報を網羅した「商品券配布先リスト」を法人が事前に作成することが、納税者と税務署とのやり取りによって生じる余計な手間と費用をかけない最善の方策だと思います。ちなみに、疎明資料作成の有用性に関しては商品券購入費用に限ったことではなく、税務調査での冤罪 を防止する有効な手立てといえるでしょう。

使途秘匿金等への課税
2016年01月28日

 顧問先の経理担当の方からしばしばお受けする質問が、支払先や使途がわからない(本当は知っているが組織の一員として帳簿に記載できない)支出の経理処理です。このような支出は懲罰的な高い税金が課されること、また、税務調査の現場で調査官と議論になる論点として税理士なら誰でも要注意事項として警戒する支出でしょう。
 実務において、「使途秘匿金」と「費途不明の交際費」とを混乱している事例が散見されますので整理したいと思います。

● 使途秘匿金(租税特別措置法第62条)
法人がした金銭の支出のうち、相当の理由がなく、その相手方の氏名又は名称及び住所又は所在地並びにその事由を当該法人の帳簿書類に記載していないものを言います。支払った目的はおろか、支払先さえも不明な支出です。
ペナルティとして、損金として認められない上に、使途秘匿金額の40%が法人税とは別に課されます。


● 費途不明の交際費(法人税法基本通達9-7-20)
法人が交際費、機密費、接待費等の名義をもって支出した金銭でその費途が明らかでないものをいいます。支払先は領収書等に記載されているのですが、支払の目的等が記載されていない支出です。
ペナルティとして、損金不算入処分になります。事業に使ったものなのかよくわからないため損金としては認められません。

 上記のようなよくわからない伝票に遭遇した経理担当者は、まず次のことを考えます(考える筈ですね)。

  • •  使途秘匿金として経理処理すべきか?
  • •  不課税取引なので仕入税額控除は当然受けられない…。消費税申告上も損なのではないか?
  • •  使途秘匿金は税務上罰金的な課税を受けるのか?
  • •  社長の指示で支出されたのだから、役員給与(賞与)で処理できないか?
  • •  役員給与(賞与)で処理した場合は、役員給与の損金不算入規定に該当しないか?
  • •  役員給与(賞与)で処理したとしても源泉徴収漏れが発生してしまうのか?
  • •  使途秘匿金として処理したら税務調査の時に不明朗経理をわざわざ調査官にアピールしているようなもの…、支払先に迷惑がかかることはないのか?

  上記の経理担当者の気付きは全て正解です。

  このように、ベテラン経理担当者ほど使途秘匿金や費途不明の交際費の処理については悩ましいものなのです。そして金額が多額になれば、追加的な税負担や会社の信用の低下によって会社財務に重大な影響を与えることもお見通しでしょう。

【税理士のアドバイス】
 中小企業の実務として、このような支出は実質的には社長に対する貸付金の性格を持つものがほとんどだと思います。なので、役員貸付金として取締役会や株主総会で決定し、議事録を作成するという手続きが肝要であろうと思われます。そして、将来的に社長の報酬を引き上げ、それを原資にして社長が会社に返済する方法が望ましいでしょう。
 金融機関対策として、決算書に「役員貸付金」があることは好ましくないという意見もあるかと思いますが、当職の経験として理由が明らかな役員貸付金であるならば、融資決定にあたって金融機関はその旨考慮しているようです。
 また、経理担当者がこのような進言を上にすることに気が引ける場合は、第三者である顧問税理士が税法及び財務上の論点を社長に説明し承諾を得るという手順を踏むことも一考に値するでしょう。気になることには税理士を使いましょう。

 ちなみに、使途秘匿金等について上に進言したり、税理士に相談したりする経理担当者が在籍する会社は信頼できそうですね。そしてそのような経理担当者を採用した経営者にも当職は敬服します。