過去のお知らせ <経営コンサルティング>

本当は怖い、助成金
2017年06月11日

 先日、当事務所の顧問先が人事系のセミナーに参加したところ、「返済不要の資金なので助成金を申請してみれば」と講師(某資格者で申請の代行を請け負うとのこと。)から熱心に勧められたそうです。後日、当職との定期面談の際に、その顧問先から「そんなおいしい話ってあるのですか?先生は助成金についてどう考えますか?」と質問されました。
 それに対する当職の助言は、「お勧めできません。その理由は、助成金を受給されるには要件を満たすことが必要であり、それを証明するためには多くの書類作成等の手間がかかるからです。それだけ手間をかけても助成金の受給は大抵一回。そして最大の欠点は、実際に事業主が負担した金額以上に助成金が支給されることはない(【参考】トライアル雇用助成金)ので、助成金目当てで本来必要のない設備投資や雇用をする等、本末転倒の結果になってしまうことが多いからです。」というものでした。

 この助言は当職の経験則にも基づくものでもあります。その経験則とは、「顧問先が助成金獲得に熱心になるとその顧問先の経営が悪化する」というもの。そこでこの経験則の理由を次のように考えてみました。

  • 1. 助成金獲得に熱心になるあまり役所に提出する書類作成等の手続きに疲弊してしまい本業が疎かになる。
  • 2. 本業での利益が見込めなくなったので助成金に頼る。
  • 3. 気が付けば助成金の獲得が目的化し、無駄な設備投資や雇用をしてしまう。その結果資金繰りが悪化するとともに固定費が膨らんで損益分岐点が上昇し、坂を転げるように経営が悪化する。

 1については成功報酬ベースで助成金申請代行を請け負う社会保険労務士がいらっしゃるようなので、そちらに依頼すれば解決するので問題の本質ではありません。2については、そもそも公的な資金である助成金を使って延命させるべき事業や企業なのかという根本的な疑問があります。その経営者が考えるべきことは速やかな市場からの退出と事業の再生でしょうから、これも問題の本質とは言えません。さて、問題は3の助成金が及ぼす「無駄誘発効果」です。

 当職は無駄誘発効果のカラクリを次のようなものと考えます。
 そもそも助成金の目的は、利益を考えると見合わないので民間がやらない(できない)経営行動について、公的機関が金銭を拠出して経営行動のハードルを下げることです。例えば、地域活性化を目論んだ新規開業の助成金メニューがあります。しかし、助成金がなければ開業できないような地域でその後継続的な経営が期待できるのでしょうか。助成金がなければ雇入れなかった人材が本当に経営に求められる戦力でしょうか。
 公的部門が本来担うべき過疎地対策や雇用対策を民間部門が引き受ける理由はありません。また、政府の失敗を民間が尻拭いする社会は、経済における個人の自由と尊厳を尊ぶ資本主義社会とは言えません。
 助成金の受給を検討する際には、ぜひ助成金の無駄誘発効果を検討していただきその怖さを今一度考えること、目先の利益に惑わされることなく本業に経営資源を集中させること、そして将来の事業見通しが芳しくないときには思い切った事業転換、リストラ等に向き合うこと、これが経営者に求められる決断です。

【参考】
 「トライアル雇用助成金」(厚生労働省所管)。この助成金は35才未満の対象者に対してトライアル雇用を実施する場合、1人あたりの支給額が最大5万円(最長3ヵ月)というもの。当該助成金の目的は次の通り。
「職業経験、技能、知識等から安定的な就職が困難な求職者について、ハローワークや職業紹介事業者等の紹介により、一定期間試行雇用した場合に助成するものであり、それらの求職者の適性や業務遂行可能性を見極め、求職者および求人者の相互理解を促進すること等を通じて、その早期就職の実現や雇用機会の創出を図ることを目的としています。」(厚生労働省HPから引用
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/trial_koyou.html)。

融資したくなる決算書
2016年10月21日

 法人や個人事業主が新規事業、設備投資、あるいは一時的な資金繰りの都合で金融機関からの借入を検討することはよくあることで、大切な財務戦略の一つと言えるでしょう。このような事業借入は個人がマイホームを取得する際の住宅ローンとどこが違うのでしょうか。答えは担保の有無です。
 金融機関は住宅ローンを実行するにあたって、借入対象となる家屋や土地に抵当権を設定します(貸付のかたに取るということ)。もちろん住宅ローンは毎月の収入から少しずつ返済するのですが、万が一ローンを返済することができなくなった場合には、金融機関は家屋や土地を差し押さえ(抵当権の行使)、換価(換金)して残っている住宅ローンの返済に充当します。金融機関にとっては家屋や土地の評価を正しく行っている限り貸し倒れのリスクはありません。
 一方、法人への事業貸付の場合、従来社長は“貸付のかたとして”個人保証を求められていましたが、最近では中小企業庁と金融庁が音頭を取って作成した「経営者保証に関するガイドライン」が浸透しているためか、金融機関がそのような要求をすることは少なくなってきました。
 そこで社長の個人保証に代わって、金融機関が融資審査の際に重視するようになったのが「決算書」です。金融機関が信用ある決算書に基づいて返済の可能性を「目利き」して融資の可否を決める時代になったと言えるでしょう。

 さて、税理士の仕事の一つとしてデューディリジェンス(以下、略してデューディリ)があります。デューディリとは、「不動産投資や企業の合併買収などの取引に際して、投資対象となる資産の価値・収益力・リスクなどを経営・財務・法務・環境などの観点から詳細に調査・分析すること」を言います。「依頼人が買いたいものを調べて値踏みすること」とでも言えるでしょうか。
 デューディリに関する細かい説明は割愛しますが、その工程の一つである決算書を分析することが非常に重要となります。この点が、金融機関が事業貸付を行うにあたって法人や事業を「目利き」する場合と同じということです。なぜならば、デューディリは調査対象のキャッシュフロー(お金の流れ)を明確にすることが重要であり、キャッシュフローは金融機関にとってはまさに貸付先の返済能力を意味するからです。

 私見になりますが、当職がデューディリをご依頼されました際に、決算書のどこに関心を持って見ているのかについていくつかご紹介しましょう。

  • ● 税務申告を最低2期以上行っていること。
  • ● 既に借入金が計上されている場合、当初の貸し付け条件の緩和(リスケ)がなく、直近の一年間返済の遅れがないこと。
  • ● 直近2期の決算期において減価償却費を除いた経常損益が赤字でないこと。
  • ● 製造業であれば、棚卸資産の明細。
  • ● サービス業であれば、人件費の傾向と内容。
  • ● 債務超過の場合、債務超過に陥った原因と債務超過解消の見込みの評価。
  • ● 法人から代表者への貸付金、仮払金がないこと。

 最後に。金融機関が融資したくなる会社、投資家が投資したくなる会社は、抽象的になってしまいますが、「決算書を通じて明るい未来が見える会社」です。明るい未来が期待できる会社なら、過去や現状はそれほど重要ではありません。お金は未来への“期待”に集まってきます。

【日本経済新聞記事】保険で農家の収入8割補償
2016年10月07日

 10月1日付けの日本経済新聞朝刊で、農林水産省が農家の収入が下落した場合、平均収入の8割台を補償する保険の制度設計を始めたとの報道がありました。
 従来型の災害時に限定されたものではなく、保険で農家の様々なリスクに備える考え方は評価できると思います。その理由は、保険は契約なので、加入資格を満たし保険料を支払うことによって、請求事由が発生すれば約款に則って保険金が確実かつ機械的に受け取ることができるからです。
 来年の通常国会に法案提出ということで、現時点では補償対象等の詳細ははっきりしていませんが、保険加入資格として税金を青色申告する農家に限定される案が有力だそうです。また、農業生産法人等、一定の規模以上の農家の利用を促す仕組みも検討されているようです。
 日本の農家は、販売先を開拓しない代償として多額の手数料が必要な「農協子会社型農家」と、独自の商品開発をして自ら販売先を開拓する「自立型農家」とに明確に分かれていくでしょう。新しい保険制度が十分に機能し、後者の農家が力強く成長してゆくことを期待します。

社長、その会社名で本当に大丈夫ですか?
2016年09月14日

 表題の「その会社名で本当に大丈夫ですか?」は、当職が法人設立に関する打合せの際にしばしばご依頼人に確認する事柄です。
 税理士は法人の設立段階から関与することが多いのですが、最初ご依頼人は大抵の場合、会社名についてこだわりを持っていらっしゃいます。当然のことですが、一税理士の立場でご依頼人に対してそのこだわりに異議を唱えることもその権利もありません。
 しかし、多くの経営事例に日々接する立場からご依頼人に経営の助言をさせて頂くこともまた税理士の大切な職責と言えるでしょう。特に会社名は将来的には事業の象徴(ブランド)となります。ブランドは日本語で暖簾(のれん)。「のれん分け」という言葉でもお分かりのように、事業が成功した暁には、「のれん」はそれ自体に金銭的価値が生じるものなのです。
 例えばカジュアルな衣料品として知名度が高いユニクロ。この法人名は株式会社ユニクロで、商号がユニクロです。ユニクロのイメージはカラフルなTシャツやポロシャツ、寒い季節になればフリースやダウンジャケットがイメージされます。比較的安価だけれども品質が良くてカラフルでおしゃれ、こんなブランドイメージが「ユニクロ」から連想されるのではないでしょうか。
 会社名は1.誰もが簡単に読み書きできる、2.商品やサービスを簡単にイメージできる、3.覚えるのが簡単、という「3つの簡単」が原則です。

悪い例をご紹介しましょう(あくまでも当職の私的見解です)。
● 符号が含まれる会社名(1に反します)
「&」(アンパサンド)、「’」(アポストロフィー)、「,」(コンマ)、「-」(ハイフン)、「.」(ピリオド)「・」(中点)等。
● 一般的ではない濁音、小さいカタカナが含まれる会社名(1に反します)
ヴォ等。
● 長い会社名(1と3に反します)
領収書の宛名を書いてもらう場合、電話で会社名を名乗る場合に面倒です。そもそも覚えてもらえないので営業上不利です。
● 当て字(単純にダサい!)
夜露死苦【よろしく】、愛羅武勇【あいらぶゆう】等。暴走族が好みそうですね。
● 会社の規模や信用を過大に見せたい意図が透ける名称(2の悪用した粉飾)
XX協会、XX協議会、XX総合、XXセンター等。このような語句を会社名に入れたがる事業主さん には往々にして事業に対する自信のなさが見え隠れしています。大きな会社=信用できる、というイメージは、重厚長大型産業が花盛りであった昭和の遺物でしょう。

 その会社名、お客様目線で考えましたか?会社名を書くときに相手方にその名前の書き方をその都度説明していませんか?
 法人設立手続は夢の第一歩ということもあり、それ自体気分が高揚するものです(当職は嫌々会社を設立する方にはお目にかかったことはありません)。だからこそ、会社名については自分のこだわりを一旦横に置いて他人の意見も尊重し、慎重に検討することが大切だと思います。