過去のお知らせ <家族信託>

【ご相談事例】40年前に弟名義で買った土地を自分名義にしたい
2016年09月26日

【ご相談内容】
 今から約40年前(沖縄国際海洋博覧会で北部地域の地価が上がっていた頃)になります。自分の弟(農家)名義で土地を購入しました。弟から名義を借りた理由は、当時その土地の地目が農地であったため、公務員である自分はその土地を直接購入することができなかったからです。
 最近になって自分の子が「あの土地は父さんの物って前から言っているけど、登記簿の名義は叔父さんのままだよね。これって大丈夫なの?本当にいずれは僕が相続できるの?税金はどうなるの?」と言いだしました。
 実は何年か前に近所の税理士に相談したところ、「弟さんからあなたに名義変更をしたら贈与扱いとなり、ザックリとだが1000万円程度の贈与税が課税されますよ。」といわれ仰天し、その後ショックのあまり何の対策もしないまま今日に至っています。
 ちなみにその土地は購入後土地区画整理事業を経て宅地になり、地価も相当上がりました。40年前に購入した際の領収書、土地売買契約書等の書類は全て紛失しています…。

【結論】
 家族信託の手法を使えば、弟さんの死後あなたのお子さんがその土地の所有権を当然に取得することができます。さらに、信託の効力発生時には贈与税はかかりません。但し、その土地の所有権を取得するときに相続財産として相続税の課税対象になりますが、贈与税に比べて相続税は免税額が大きいこと、節税策を取りやすいこと等から税額はかなり少なくなる場合が多いです。

【解説】
 このような事例の場合、実務的に贈与や売買、または遺言書によって「真の所有者」名義に戻す方法が広く行われていました。しかし現在では、信託による実質的な名義変更を指導する専門家も増えてきています。
 信託を使う最大のメリットは税金です。信託の効力発生時には贈与税、譲渡所得税は課税されません。さらに信託を登記する際に必要となる印紙税は200円、登録免許税は土地の場合固定資産税評価額の3/1000とかなり低額な上、不動産取得税にいたっては信託について税法上形式的な所有権の移転とみなされ非課税です。
 また、信託した後は所有者として登記簿で自分の名前が確認できるので当事者の方々は安心するようです。
 一方、信託のデメリットとしては、信託のスキーム(信託の作り方)を誤ると、贈与税の課税、信託の終了時に所有権が計画通りに移転しない(信託抜けの失敗)等、想定外の損失を招きかねません。

 今回の事例であれば名義を貸した弟さんも自分の生前に名義関係を整理しておきたいと思うのが人情でしょう。当事者である自分たちの死後、過去の名義の貸し借りによって自分たちの家族が混乱し、争うことを望む人は誰もいません。

 最後になりますが、弟さんとそもそも「真の所有者」は誰かについて争ってしまった場合には、調停や裁判によって所有権を確定させ、調停調書や判決文を添付書類として所有権移転登記する方法もあります。

【ご相談事例】自分の死後、配偶者が安心して自宅に住み続けて欲しい(遺留分 家族信託 相続税)
2016年06月21日

【ご相談内容】
 ご相談者はとても仲の良い高齢のご夫婦。
 夫「最近、将来のことを考えると不安でなりません。息子が1人いますが、残念ながら私たち夫婦はその嫁とどうも関係が良くありません。私の財産は自宅の他にはこれといったものがなく、現預金等の金融資産は僅かです。
 気になることは私の遺産に関する「遺留分」です。妻に遺産を全て相続させる旨の遺言書を書こうと考えていますが、この場合でも息子は1/4の遺留分を持っています。自宅の価値は知り合いの不動産業者から1億円程度と言われました。息子が遺留分を主張してきた場合2500万円を分け与える必要があり、妻は私の死後金銭で支払うことは自宅を処分しない限り到底できません。
 息子は今のところ「自分は遺留分なんて主張しないから、母さんが安心して今の家に住み続ければいいよ」と言っていますが、嫁の言いなりになる傾向があることが気になります。私の死後、嫁が遺留分を強力に主張してきた場合に息子は嫁を説得しきれるとは思えません。
 金銭で遺留分を支払えない場合は自宅を処分するか、自宅を共有名義にするほかないのでしょうか。なにか他に良い方法はありませんか…。」

【結論】
1.家族信託を使って、妻の居住権を安定化させる方法が考えられる。具体的には「信託受益権の複層化信託」を用いて、「土地建物を住まいとして使う権利」と「不動産そのものを所有する権利」に分解し、前者を妻、後者を息子に相続させる。そして妻の死後、息子は「土地建物を住まいとして使う権利」を相続する。
2.ここでは、複層化信託の信託受益権の相続税評価額算定が全体のスキームの肝となる。具体的には財産評価基本通達202を用いて合理的に推算し、信託受益権を評価する。
3.信託法は比較的新しい法律であり、特に複層化信託の経験がある専門家は多くない。さらに、このスキームが関係した遺留分を巡っての判例がないことや、信託受益権の相続税評価額に推算が入る故に評価の恣意性を排除しきれないため、評価額を巡って税務当局と意見が分かれる可能性があるので注意を要する。

【解説】
 最近多いご相談です。国税庁の調査(平成26年分の相続税の申告状況について)によれば、不動産が相続財産に占める割合は41.5%です。その割合は年々減少傾向にあるものの、主たる相続財産としての地位は当分揺るがないと思われます。
 このような日本における相続財産に占める不動産割合の高さと若年世代である相続人の経済状態の悪化が相まって、相続財産が居住用不動産である場合に親の持ち家に子が頼る傾向があるように感じます。そして、問題を複雑化させるのが子の配偶者との関係性と言えるでしょう。

 このような「困った」に対する有力な処方箋として昨今専門家の間で用いられる手法が「信託」です。今回のご相談のように、配偶者の「居住権」を担保する仕組みとしては信託の応用である「複層化信託」が有効であると考えられます。そして、複層化信託を組成する際に難易度が高い部品が税金です(後述します)。

  複層化信託とは、信託受益権(ご相談の事例の場合は、受益者としての配偶者と子が持つ権利のこと)に対して、「土地建物を住まいとして使う権利(収益を得る権利)」と「不動産そのものを所有する権利(元本を所有する権利)」とに分けた信託のことを言います。
 例えば、マンゴーの木とそこに成ったマンゴーの実があるとしましょう。収益を得る権利はマンゴーの実を収穫しそれを食する権利。一方、元本を所有する権利はマンゴーの木を所有する権利。ご相談の事例の場合は、妻はマンゴーの実を安心して収穫し食べ続けることができれば良いわけです。一方、子は母親が死亡した後確実にマンゴーの木を所有することができれば安心です。
 さらに遺留分の問題については、「収益を得る権利」も「元本を所有する権利」もともに金銭的価値を有するので、「元本を所有する権利」の価値が遺留分を上回れば、信託を使わなかった場合に妻が子に支払う義務のある代償金の問題も解決するでしょう。

  先に述べたように複層化信託を組成する際に注意しなければならない点は税金です。複層化信託を使用するにあたって収益受益者が取得する収益受益権の税務評価方式は次の通りです(受益者連続型信託の評価は下記と異なります)。
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1.収益受益権

  • (ア)信託の効力発生時において受益者が将来受けるべき利益の額(受益者の存命年数や居住の価値を推算)
  • (イ)推算した価額ごとに課税時期からそれぞれの受益の時期までの期間に応ずる基準年利率による複利現価率を乗じる 

2.元本受益権

  • (ア)信託財産の価額を算出
  • (イ)上記から収益受益権を控除

3.信託受益権=1+2
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遺言代用信託について
2015年12月26日

 遺言代用信託とは、信託行為(信託契約・遺言・信託宣言)によって、自分(委託者)の死亡後の受益者、あるいは残余財産の帰属権利者を定めるための信託です。生前贈与とは異なる「相続の予約」といったイメージでしょう。

 遺言書との違いは、信託の方が作成の心理的ハードルが低いこと、信託行為は登記されるため受益者や残余財産帰属者の権利関係が安定することにあります(自分の知らない遺言書の存在を疑心暗鬼… 、そのような必要はありません)。

 一方、信託の作り方次第では想定外の税金(例えば贈与税)が発生するリスクがあります。また、信託は作った後も税務署への書類の提出等を定期的に行う必要があります。

わたなべ税理士事務所では税金を最大限考慮した信託をご依頼者様とともに考えます。

  1.  1. 税務
    1. (ア) 税務署への提出書類作成及び税務代理(初年度の①及び②に関しましては信託を組成する際の報酬に含まれます。2年目以降の①及び②、さらに③に関しましては別途ご相談に応じます。)
      • ① 信託の計算書(原則として毎年1月31日まで)
      • ② 不動産所得に関する明細書(信託から生じる不動産所得がある場合)
      • ③ 信託に関する受益者別(委託者別)調書及びその合計表(作成事由が生じた場合に翌月末日まで)
    2. (イ) 税務署から問い合わせがあった際には、ご依頼者様の税務代理人として対応
    3. (ウ) 税金試算(相続税、贈与税、流通税等)
    4. (エ) 信託に関する税務相談(気になったらいつでもお気軽にお電話をください)

  2.  2. 信託スキームの組成
    1. (ア) 信託契約書、信託目録の作成(委託者、受益者、受託者間の調整を含む)
    2. (イ) 司法書士のご紹介