過去のお知らせ <所得税>

優遇される5,000万円医院・歯科医院(4)
2019年04月18日

 第4回目では最終回として、年間社会保険診療報酬が5,000万円を超えそうな場合の対応について解説したいと思います。

2. 概算経費特例使用に当たっての注意点(その2)
 概算経費特例は個人事業主の開業医にとって税務上大変有利な制度ですが、社会保険診療報酬が5,000万円を1円でも超えると使えません。
 ちなみに、平成25年度税制改正で概算経費特例適用要件が「医業(歯科医業)の事業所得の総収入金額が7,000万円以下の年分」に狭められました。自由診療報酬や物品販売収入も概算経費特例適用の算定基礎になったわけです。
 したがって、説明を簡略化するため、以下のシミュレーションは自由診療報酬等が2,000万円以下であることを前提とした概算とします。

● 社保報酬5,001万円の税引後所得シミュレーション

  • ・所得税、住民税、個人事業税を合わせた税率→50%
  • ・売上高事業所得率→50%
  • ・税額→5,001万円×50%×50%=1,250万円
  • ・税引後所得(手元に残ったお金)→5,001万円×50%-1,250万円=1,250万円

● 社保報酬5,000万円の税引後所得シミュレーション

  • ・概算経費額→5,000万円×57%+490万円=3,340万円
  • ・所得税、住民税、個人事業税を合わせた税率→40%
  • ・税額→(5,000万円-3,340万円)×40%=650万円
  • ・税引後所得(手元に残ったお金)→5,000万円×50%-650万円=1,850万円

● 差額600万円に相当する社保報酬

  • ・600÷50%÷50%=2,400万円

 したがって、上記の如く社保報酬が5,000万円を超えた場合には、概ね7,400万円の報酬を得なければ手元に残るお金は目減りすることになります。

 経営の観点では、毎年8月の終わり頃までに年間社保報酬を予想して、5,000万円を超えそうな場合には院長先生は次の行動をとることになります。

  • (ア) 学会出席、職員の研修、休暇等で休診し、5,000万円未満にとどめる。
  • (イ) 診療日及び診療時間、患者受け入れを増加させ、7,400万円以上を目指す。
  • (ウ) 成り行き任せ。

 具体的な対応の際には、患者、スタッフに対する影響を最小限に止める努力が必要でしょう。患者対応については他の診療所との連携や時期をずらした計画的な休診、スタッフ対応については休診時の所得補償や繁忙対策、手当支給が考えられます。いずれにしても(ウ)成り行き任せは避けたいところです。

 当事務所の関与先ご指導の基本方針は、5,001~7,400万円の着地を回避する長期戦略を持つこと。具体的には、スタッフ採用計画、診療所の多角化、予約診療制、先生の働き方改革と事業承継も含むご家族のライフプラン、設備投資計画の作成等によって中長期的な手元資金の最大化を図ることです。
 良質な医療を確保するためには掛け声だけでは不十分であり、医師、歯科医師、その他の医療従事者について、その職業に就く迄の投資回収も含めた十分な報酬が確保される必要があることは言うまでもありません。

優遇される5,000万円医院・歯科医院(3)
2019年03月27日

第3回、4回では概算経費特例を使用する際の注意点を解説します。

1. 概算経費特例使用に当たっての注意点(その1)
● 後出しじゃんけんは認められない。
 「後出しじゃんけん」の具体例は次のようなものです。
 医院の事務を担当している奥様が、租税特別措置法第26条を適用して事業所得の計算を行い、確定申告を提出期限までにしました。その後、税理士関与が始まり、過去の申告を確認したところ、概算経費より実額計算の必要経費の方が多くなることに気付きました。この場合、残念ながら実額計算による更正の請求、つまり税金の払い戻しはできません。
 また、上記と逆のケース。例えば医療関係の税務代理経験がない税理士が、措置法第26条の不知によって概算経費が有利であったにも拘わらず実額計算で申告してしまったケースです。この場合も法令上一旦確定申告が終了してしまえば、更正の請求不可=措置法第26条適用は不可、となってしまいます。
 この税理士による失敗については、「税理士職業賠償責任保険事故事例(税理士会)平成6年~平成19年掲載事例抜粋」で公開されており、所得税、住民税を合わせた約200万円の損害賠償額全額について保険支払の対象となりました。

 次回(4回目)は、概算経費特例使用に当たっての注意点(その2)として、年間社会保険診療報酬が5,000万円を超えそうな場合の考え方とその対策にふれ、一連の解説のまとめとします。

優遇される5,000万円医院・歯科医院(2)
2019年03月25日

 さて、前回に引き続き、概算経費特例の詳細についてご説明します。

1. 概算経費特例の節税効果
 条文では、社会保険診療報酬が2,500万円以下の部分は72%、2,500万円を超え3,000万円以下の部分は70%というように、段階的に定められた経費率を社会保険診療報酬に乗じる仕組みになっています。一般的には次の速算表によって概算経費額を知ることができます。
 要約すれば、社会保険診療報酬5,000万円までは経費率が約70%、仮に4,500万円の収入であれば経費は約3,200万円になります。

 概算経費特例と立法趣旨が同じような制度として、売上高が5,000万円以下の事業者に対する消費税の簡易課税制度があります。消費税の簡易課税制度とは、小規模事業者の消費税申告事務を簡便化するために、仕入れの都度消費税を別途計算することなく、業種ごとのみなし仕入れ率を使用して、納税すべき消費税額を計算できる制度。例えば、サービス業の場合、みなし仕入れ率は50%です。ちなみに、この簡易課税制度を巡っては会計検査院が平成24年に「益税」の問題を指摘しているところです。
 いずれにしても、仮に医院等の概算経費率をサービス業の50%と仮定し上記の条件に置き換えると、次のような計算が可能です。
 4,500万円×(70%-50%)=900万円
 仮に所得税、住民税、事業税を合わせた税率が50%として900万円×50%=450万円
 したがって、医院等は概算経費特例を利用するだけで毎年450万円が手元に残ることになります。概算経費特例が医院等の最大の節税アイテムと言われる所以です。そして、この資金を、医師等の技術の向上及び設備投資を通じた患者への還元、スタッフの処遇改善等に向けることが政策目的であることは言うまでもないでしょう。
 医院等は概算経費特例の制度趣旨を十分に理解し、概算経費特例を適用可能な医院等は積極的、かつ、計画的に当該制度を利用すべきです。

優遇される5,000万円医院・歯科医院(1)
2019年03月24日

 地方部では医療機関、医師不足と言われています。しかし、その真偽については、「医療サービスの質」の検証を抜きにして安易に判断することはできません。医療機関の数が多くても、患者がその質に満足していなければ、その地域外の医療機関を利用するでしょう。わかり易い例が、アジアの富裕層が高品質の日本の医療技術を求めて訪日する医療ツーリズムです。
 沖縄も例外ではありませんが、公共交通機関が脆弱=高齢者が自家用車で移動、という図式において患者の気持ちは、受診の満足度>移動の手間、であることが容易に想像できます。
 さて、ここ沖縄県北部地域においても医療機関不足が喧伝されていますが、単なる数の不足というよりは、「質の高い」医療機関の不足かもしれません。実際に当事務所の顧問先でも、高齢の医師や歯科医師が引退し、研究熱心な若手医師等が新規に医院等を開業し、今まで地域外に通院していた地域の患者さんが戻ってきた例は数多くあります。

 このような若手医師等の開業を政策的にバックアップする制度が、社会保険診療報酬の所得計算の特例、いわゆる概算経費特例です。
 その内容をざっくり説明すると、「医院、歯科医院の事業所得を計算する場合、年間の社会保険診療報酬の額が5,000万円以下の場合、概算経費特例(租税特別措置法第26条)により所得を計算することができる制度」です。なお、平成25年度の税制改正により、平成26年分以後の所得税については、医業及び歯科医業の収入金額(社会保険診療と自由診療の合計額)が7,000万円を超える場合には概算経費の適用は受けられないことになったことには注意が必要です。
 この医院、歯科医院への概算経費特例の使い方、留意点については次回以降にご説明します。

「給与所得者の配偶者控除等申告書」自動計算シート
2018年11月23日

 平成30年分年末調整で初登場の「給与所得者の配偶者控除等申告書」。多くの給与所得者(サラリーマン)にとっては記載に手間取ることと思います。
 しかし、国税庁がとっても便利な自動計算シート(Excel)を提供しています。http://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/gensen/annai/1648_71_nyuryoku.htm
 このシートに金額や年齢等を入力すると、配偶者控除、配偶者特別控除適用の可否、可の場合はその控除額を計算してくれるので是非利用しましょう。

 このシートを利用するにあたっては、次の点を確認しましょう。特に、人間が「収入」と「所得」を区別できないと、Excelは正しく計算してくれませんのでご注意を。

1. そもそも提出不要な人

  • >独身者
  • >本人の給与「年収」が1,220万円超(「所得」に換算すると1,000万円超)
  • >配偶者の給与「年収」が201万6,000円以上(「所得」に換算すると123万円以上)

2. 給与所得者が、年末調整で配偶者控除又は配偶者特別控除を受けることを希望する場合に、本人の責任に基づいて、給与を支給している事業所に提出する書類であること。

3. 事業主に知られたくない「副業」や「所得」がある場合はこの申告書の提出自体を慎重に判断すること。ちなみに年末調整還付金を多く受けたいばかりに、副業や他の所得を記載しないでこの申告書を提出することは禁物です。

4. 偽りの記載に基づいて配偶者控除や配偶者特別控除を適用し、その後税務署で偽りが判明した場合(マイナンバーで偽りや誤りはすぐにバレます)には、事業主が年末調整をやり直すことになります。これによって事業主に迷惑をかけることになる他、副業やその他収入が事業主の知れるところとなります。

 尚、所得税確定申告代理を税理士に依頼される方で、年末調整の際に「給与所得者の配偶者控除等申告書」を事業所に提出されなかった方は、税理士が必要に応じて配偶者控除等を計算し、確定申告で所得から控除しますので安心してください。

【ご相談事例】青色申告承認申請却下?
2018年09月17日

【相談内容】
 先週税務顧問をお引き受けしたA様からのご相談です。ご当人の承諾を頂いたのでご紹介します。

 「私は3年前、住んでいたマンションの一室を転勤の為にやむなく賃貸に出し、賃料を得ています。
 昨年の6月に脱サラしてIT関連の仕事を個人事業で開始しました。開業届は6月中に税務署へ提出しました。今回の仕事については、事業という認識なので青色申告で行おうと思い、提出期限が事業開始後2か月以内ということから、7月最初の週に個人事業の青色申告承認申請書を税務署へ提出し、翌年の確定申告期間中に青色申告を済ませました。
 ところが税務署から昨年分の確定申告は白色であるとの指摘を受けました。新規開業から2か月以内に青色申告承認申請書を提出したのに納得できません。」

【結論】
 残念ながら昨年分は白色事業者でした。今後は当職が税務代理人になりますのでこのような行き違いは起こりません。ご安心を。

【解説】
 最初に青色申告承認の要件を確認します。
1. 原則
 新たに青色申告の申請をする人は、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出すること。
2. 新規開業した場合(その年の1月16日以後に新規に業務を開始した場合)
 業務を開始した日から2か月以内に「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出すること。

 今回のケースは、A様が上記2と判断したものです。しかし、実際は1であった為、昨年の確定申告は白色になってしまいました。原因は、「業務」です。

 意外なことですが、「業務」については所得税法上明確な規定はありません。この定義規定の不存在が、業務を巡っていくつかの混乱を招いているのも事実です。ちなみに実務では、「事業に至らない規模であるが、反復継続的に営利を目的として行われる行為」として業務を定義づけることが一般的で、実際に当事務所でも判断基準として採用しています。

 したがって、たとえ一室であっても、不動産貸付は不動産所得の基因となる「業務」に該当し、IT事業の開始は「業務の追加」であって新たに業務を開始したことにならないため、青色承認申請書の提出期限内に提出された申請書ではないことになります。

【ご相談事例】他人の借金を肩代わりしたうえ、税金を支払うの?
2018年09月15日

【相談内容】
 5年前に友人が金融機関から借入する際に連帯保証人になりました。その借入金の返済が滞り、私が連帯保証人として借金を返済する羽目になりました。返済のためには、私が所有する不動産を売却するしかありません。
 妻にも今回の件を知らせない訳にもいかないので話をしたところ、「税金は大丈夫なのでしょうね…」と言われ、役場の無料税金相談会へ赴きました。そこでは無料相談と言うこともあってか、課税の可能性があるかもと言われるだけで詳しい説明はいただけませんでした。連帯保証人としての責任を全うするために自分の資産を売却し、本当に税金を払う必要があるのか、理由も含めてご教示ください。

【結論】
 次の要件に全て当てはまれば税金は発生しません。

  • 1. 本来の債務者が既に債務を弁済できない状態であるときに、債務の保証をしたものでないこと。
  • 2. 保証債務を履行するために土地建物などを売っていること。
  • 3. 履行をした債務の全額又は一部の金額が、本来の債務者から回収できなくなったこと。

【解説】
 保証債務を履行するために土地建物などを売った場合には、所得がなかったものとする特例があります(所得税法64条)。この場合の所得とは、次の三つのうち一番低い金額です(金額は例示)。

  • 1. 肩代りをした債務のうち、本来の債務者から回収できなくなった金額  1000万円
  • 2. 保証債務を履行した人のその年の総所得金額等の合計額  5000万円
  • 3. 売った土地建物などの譲渡益の額  3000万円

 債務者に代わって返済し、その債務者本人が仮に夜逃げして1000万円を踏み倒されたとしましょう。この場合には、保証した債務を肩代わり返済するため売却した土地建物の譲渡益3000万円から所得税法64条で所得と見做さない1000万円を差し引いた2000万円については課税対象所得となります。つまり、5000万円-1000万円=4000万円が保証債務を履行した人のその年の総所得金額となります。

 保証債務の特例については、計算自体は比較的簡単です。難しいのは本来の債務者から回収できないこと、専門的には求償権消滅の証明でしょう。この点、本来の債務者が自己破産している、失踪宣告を受けているのであれば問題なく回収不能と言えるでしょう。
 保証債務の特例を巡る国税不服審判所の裁決や裁判所の判例でも、その多くが求償権消滅の是非を巡る争いです。求償権消滅については、所得税基本通達である程度の目安が示されています。しかし、証拠集めの巧拙、客観性の確保が審判等での勝ち負けに直結することから、当職の経験では債務者の返済能力が不透明ならば、早めの弁護士への相談、裁判所での調停申立を検討された方が無難だと思います。

【ご相談事例】少しでも多く返済に回したい
2018年09月03日

【相談内容】
 某金融機関からの借入金で不動産を購入しましたが、当てにしていた返済原資収入が期待できなくなってしまいました。金融機関からは当該不動産を任意売却して残債を一括で返済するように要求されています。少しでも多く返済に回したいのですが、不動産を売却した場合にどのくらい税金を納めなければいけないのか心配です。ご教示ください。

【結論】
 譲渡所得(売却益)が存在すれば原則課税です。一方、例外として【解説】3.(ア)、(イ)(ウ)の要件を全て満たせば非課税です。

【解説】
1. 譲渡所得=売却収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額、です(所得税法33条)。この譲渡所得がゼロ以下であれば譲渡所得は発生しません。譲渡所得が発生しないなら税金はゼロです。
2. 上記算式の留意事項としては、借入で当該不動産を購入した場合、かつ、売却時に残債がある場合、その残債は譲渡所得からは控除できないという点です。
3. 但し、残債があり、かつ、譲渡所得が発生する場合であっても、次の全ての要件を満たす場合には非課税です(所得税法9条10項、所得税法施行令26条)。

  • (ア) 資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であること。
  • (イ) 強制執行が避けられないこと。
  • (ウ) 譲渡対価の全額が弁済に充てられたこと。
4. 特別控除額の例として、居住用財産(マイホーム)を譲渡した場合の3000万円の特別控除特例があります。その他にも、公共事業のために土地家屋を売却した場合の控除等の特別控除特例があります。適用要件が複雑なものもありますので、申告に当たっては事前に税理士等へのご相談をお勧めします。

 上記3(ア)「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であること」について、過去の通達等では、「その者の債務の金額が積極財産の価額を超えるときのように社会通念上債務の支払が不能(破産手続開始の原因となる程度に至らないものを含む。)と認められる場合をいうもの」(昭57直資2-177、平18課資2-2改正)、といった些か抽象的な書振りとなっています。
 これを補完するのなら、財産評価通達を参考にされるのが良いでしょう。その205に貸付債権の評価について規定しており、「債務者の資力喪失の具体例」を検討する場合に参考となります。ちなみに、債務者が個人事業主であれば最近の納税の状況、預貯金残高と推移、信用、才能等を総合的に勘案して評価することになります。要するに、「今後いくらくらい稼げる人物か」について、可能な限り客観的に評価することがポイントとなります。返済不能な人物と評価されれば、その人物への貸付金は相続財産に含める必要はありません。

【ご相談事例】副業・兼業と税金
2018年03月20日

【ご相談内容】
 先ほど改定された厚生労働省のモデル就業規則に、副業・兼業(以下、副業等)が追加されたことから、当社でも副業等を認めようと考えています。その際の税務はどのようになるのでしょうか?就業規則で副業等を許可した手前、税金のことは従業員個人の問題であったとしても、会社が全く関知しないということは如何なものかという立場です。

【結論】
1. 手続

  • (ア) 税務署に開業届、青色申告の承認申請書等を提出
  • (イ) 所得税等の確定申告

2. 留意点
 副業等から生じる所得の種類は「事業所得」又は「雑所得」ですが、どちらかについては法律に明確な規定はありません。ちなみに事業所得で、かつ、赤字である場合には給与所得からその赤字を引くことができ、結果として源泉徴収済み税額が還付されます。また、事業所得の場合には、一定の要件を満たす記帳を実施した場合に青色申告特別控除として65万円が事業所得から控除されます。
 ちなみに、事業主が個人の確定申告に係る費用(税金以外)を福利厚生メニューとして就業規則に規定し、負担する例もあります。納税に関する社会的責任を重視する姿勢が評価されることは勿論のこと、自律的で創造性に優れた人材を確保する戦略として副業等を積極的に利用している例でしょう。

【解説】
 当職も金融機関に勤務していた時、税理士を兼業していました。会社員VS税理士の収入は9:1程度だったでしょうか。当時は勤務していた会社を「一番大きな顧問先」と考えていました。働き方改革真っ盛りの今となってみては、流行の最先端(というよりは、流行の先を走り過ぎていた…)自分が誇らしくもあります(笑)。

 さて、“【結論】2.留意点”の通り、副業の税務については、その所得区分が「事業所得」なのか「雑所得」なのかが大きな問題となります。法律に明確な規定がないため、国税不服審判所の裁決例、裁判所の判例によって判断するしかありません。裁決例及び判例のポイントを要約してみました。

  • 1. 自己の計算と危険においてする企画遂行性の有無→(口語訳)自分のお財布から必要な経費は支払い、損したら自分で被るのであれば事業ですよ。そして、その副業等が本業になってもずっと続ける意思がありますか。
  • 2. 精神的肉体的労務の投入の有無→(口語訳)片手間では事業としては認めませんよ。
  • 3. 人的・物的設備の有無→(口語訳)自分で用意した事業を行う場所、設備はありますか。
  • 4. 職業・経験及び社会的地位→(口語訳)事業をするための資格、経験、そしてあなたを必要とするお客様はいますか。
  • 5. 社会通念→(口語訳)実務的にはこれが一番大事。他所様から見て、あなたは事業主に見えていますか?

 以上を総合的に勘案して「事業所得」もしくは「雑所得」かを判断します。

 政府は「終身雇用」から「副業等の推進」に舵を切りました。これからはサラリーマン社会も費やした時間中心→成果中心、つまり成果主義に替わることは必至です。それも急速に。
 モデル就業規則の注釈には、「就業規則の規定を拡大解釈して、必要以上に労働者の副業・兼業を制限することのないよう、適切な運用を心がけていただくことが肝要です」との記載があります。当職はこの記載に政府の副業等推進に関する並々ならぬメッセージを感じました。
 最後に、税制が「働き方改革」の足かせとならないことを祈るばかりです。

【ご相談事例】共有名義の場合65万円 or 10万円?
2017年04月08日

【ご相談内容】
 兄と共有名義(50:50)で12室のワンルームマンションを貸付し、その不動産所得があります。それぞれが青色申告をしていますが、二人ともが65万円の青色申告特別控除を適用することはできるのでしょうか。

【結論】
 可能です。

【解説】
 ご相談の趣旨は、マンションを二人で共有している場合の「5棟10室基準」について部屋数を按分する必要の有無だと思われます。
 前回(3月26日付け最新のお知らせ)でご説明したように、租税特別措置法(第25条の2)では、65万円の青色申告特別控除の適用要件について次のように規定しています。

  • 1. 不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営む青色申告者であること。
  • 2. 正規の簿記の原則に従い取引を記帳していること。
  • 3. 貸借対照表、損益計算書、その他の計算明細書等を添付し、所定の事項を記載した申告書を期限内に提出すること。

 確定申告については税務署の考えを「忖度(そんたく)」した処理が散見されますが、税金の計算に関しては法律から逸脱することはあり得ません。 65万円の青色申告特別控除の適用要件も税法に規定されている通り、これ以上でもこれ以下でもありません。
 もちろん、「各自の持分ごとに部屋数を判断」などと言ったことはどこにも書かれていません。また、条理(物事の道理)を考えても、共有にすることによって不動産貸付事業に関する帳簿作成の手間はかえって増えるでしょう。

 税務署には確定申告書を見直して、税金を多く支払っている納税者に連絡する義務はありません。したがって、実際のところ65万円控除が可能であるにも関わらず「各自の持分ごとに部屋数を判断」し、10万円控除を選択されている方は多くいらっしゃるようです。

 それでは過去に遡って訂正すること(更生の請求)は可能でしょうか。答えは「上記1~3の要件を満たしていれば可能」です。更正の請求は過去5年に遡って(原則として法定申告期限から5年以内)可能なので、最大275万円(「65万円-10万円」の5年分)の所得が減額される可能性があります。

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