過去のお知らせ <所得税>

【ご相談事例】青色申告承認申請却下?
2018年09月17日

【相談内容】
 先週税務顧問をお引き受けしたA様からのご相談です。ご当人の承諾を頂いたのでご紹介します。

 「私は3年前、住んでいたマンションの一室を転勤の為にやむなく賃貸に出し、賃料を得ています。
 昨年の6月に脱サラしてIT関連の仕事を個人事業で開始しました。開業届は6月中に税務署へ提出しました。今回の仕事については、事業という認識なので青色申告で行おうと思い、提出期限が事業開始後2か月以内ということから、7月最初の週に個人事業の青色申告承認申請書を税務署へ提出し、翌年の確定申告期間中に青色申告を済ませました。
 ところが税務署から昨年分の確定申告は白色であるとの指摘を受けました。新規開業から2か月以内に青色申告承認申請書を提出したのに納得できません。」

【結論】
 残念ながら昨年分は白色事業者でした。今後は当職が税務代理人になりますのでこのような行き違いは起こりません。ご安心を。

【解説】
 最初に青色申告承認の要件を確認します。
1. 原則
 新たに青色申告の申請をする人は、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出すること。
2. 新規開業した場合(その年の1月16日以後に新規に業務を開始した場合)
 業務を開始した日から2か月以内に「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出すること。

 今回のケースは、A様が上記2と判断したものです。しかし、実際は1であった為、昨年の確定申告は白色になってしまいました。原因は、「業務」です。

 意外なことですが、「業務」については所得税法上明確な規定はありません。この定義規定の不存在が、業務を巡っていくつかの混乱を招いているのも事実です。ちなみに実務では、「事業に至らない規模であるが、反復継続的に営利を目的として行われる行為」として業務を定義づけることが一般的で、実際に当事務所でも判断基準として採用しています。

 したがって、たとえ一室であっても、不動産貸付は不動産所得の基因となる「業務」に該当し、IT事業の開始は「業務の追加」であって新たに業務を開始したことにならないため、青色承認申請書の提出期限内に提出された申請書ではないことになります。

【ご相談事例】他人の借金を肩代わりしたうえ、税金を支払うの?
2018年09月15日

【相談内容】
 5年前に友人が金融機関から借入する際に連帯保証人になりました。その借入金の返済が滞り、私が連帯保証人として借金を返済する羽目になりました。返済のためには、私が所有する不動産を売却するしかありません。
 妻にも今回の件を知らせない訳にもいかないので話をしたところ、「税金は大丈夫なのでしょうね…」と言われ、役場の無料税金相談会へ赴きました。そこでは無料相談と言うこともあってか、課税の可能性があるかもと言われるだけで詳しい説明はいただけませんでした。連帯保証人としての責任を全うするために自分の資産を売却し、本当に税金を払う必要があるのか、理由も含めてご教示ください。

【結論】
 次の要件に全て当てはまれば税金は発生しません。

  • 1. 本来の債務者が既に債務を弁済できない状態であるときに、債務の保証をしたものでないこと。
  • 2. 保証債務を履行するために土地建物などを売っていること。
  • 3. 履行をした債務の全額又は一部の金額が、本来の債務者から回収できなくなったこと。

【解説】
 保証債務を履行するために土地建物などを売った場合には、所得がなかったものとする特例があります(所得税法64条)。この場合の所得とは、次の三つのうち一番低い金額です(金額は例示)。

  • 1. 肩代りをした債務のうち、本来の債務者から回収できなくなった金額  1000万円
  • 2. 保証債務を履行した人のその年の総所得金額等の合計額  5000万円
  • 3. 売った土地建物などの譲渡益の額  3000万円

 債務者に代わって返済し、その債務者本人が仮に夜逃げして1000万円を踏み倒されたとしましょう。この場合には、保証した債務を肩代わり返済するため売却した土地建物の譲渡益3000万円から所得税法64条で所得と見做さない1000万円を差し引いた2000万円については課税対象所得となります。つまり、5000万円-1000万円=4000万円が保証債務を履行した人のその年の総所得金額となります。

 保証債務の特例については、計算自体は比較的簡単です。難しいのは本来の債務者から回収できないこと、専門的には求償権消滅の証明でしょう。この点、本来の債務者が自己破産している、失踪宣告を受けているのであれば問題なく回収不能と言えるでしょう。
 保証債務の特例を巡る国税不服審判所の裁決や裁判所の判例でも、その多くが求償権消滅の是非を巡る争いです。求償権消滅については、所得税基本通達である程度の目安が示されています。しかし、証拠集めの巧拙、客観性の確保が審判等での勝ち負けに直結することから、当職の経験では債務者の返済能力が不透明ならば、早めの弁護士への相談、裁判所での調停申立を検討された方が無難だと思います。

【ご相談事例】少しでも多く返済に回したい
2018年09月03日

【相談内容】
 某金融機関からの借入金で不動産を購入しましたが、当てにしていた返済原資収入が期待できなくなってしまいました。金融機関からは当該不動産を任意売却して残債を一括で返済するように要求されています。少しでも多く返済に回したいのですが、不動産を売却した場合にどのくらい税金を納めなければいけないのか心配です。ご教示ください。

【結論】
 譲渡所得(売却益)が存在すれば原則課税です。一方、例外として【解説】3.(ア)、(イ)(ウ)の要件を全て満たせば非課税です。

【解説】
1. 譲渡所得=売却収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額、です(所得税法33条)。この譲渡所得がゼロ以下であれば譲渡所得は発生しません。譲渡所得が発生しないなら税金はゼロです。
2. 上記算式の留意事項としては、借入で当該不動産を購入した場合、かつ、売却時に残債がある場合、その残債は譲渡所得からは控除できないという点です。
3. 但し、残債があり、かつ、譲渡所得が発生する場合であっても、次の全ての要件を満たす場合には非課税です(所得税法9条10項、所得税法施行令26条)。

  • (ア) 資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であること。
  • (イ) 強制執行が避けられないこと。
  • (ウ) 譲渡対価の全額が弁済に充てられたこと。
4. 特別控除額の例として、居住用財産(マイホーム)を譲渡した場合の3000万円の特別控除特例があります。その他にも、公共事業のために土地家屋を売却した場合の控除等の特別控除特例があります。適用要件が複雑なものもありますので、申告に当たっては事前に税理士等へのご相談をお勧めします。

 上記3(ア)「資力を喪失して債務を弁済することが著しく困難であること」について、過去の通達等では、「その者の債務の金額が積極財産の価額を超えるときのように社会通念上債務の支払が不能(破産手続開始の原因となる程度に至らないものを含む。)と認められる場合をいうもの」(昭57直資2-177、平18課資2-2改正)、といった些か抽象的な書振りとなっています。
 これを補完するのなら、財産評価通達を参考にされるのが良いでしょう。その205に貸付債権の評価について規定しており、「債務者の資力喪失の具体例」を検討する場合に参考となります。ちなみに、債務者が個人事業主であれば最近の納税の状況、預貯金残高と推移、信用、才能等を総合的に勘案して評価することになります。要するに、「今後いくらくらい稼げる人物か」について、可能な限り客観的に評価することがポイントとなります。返済不能な人物と評価されれば、その人物への貸付金は相続財産に含める必要はありません。

【ご相談事例】副業・兼業と税金
2018年03月20日

【ご相談内容】
 先ほど改定された厚生労働省のモデル就業規則に、副業・兼業(以下、副業等)が追加されたことから、当社でも副業等を認めようと考えています。その際の税務はどのようになるのでしょうか?就業規則で副業等を許可した手前、税金のことは従業員個人の問題であったとしても、会社が全く関知しないということは如何なものかという立場です。

【結論】
1. 手続

  • (ア) 税務署に開業届、青色申告の承認申請書等を提出
  • (イ) 所得税等の確定申告

2. 留意点
 副業等から生じる所得の種類は「事業所得」又は「雑所得」ですが、どちらかについては法律に明確な規定はありません。ちなみに事業所得で、かつ、赤字である場合には給与所得からその赤字を引くことができ、結果として源泉徴収済み税額が還付されます。また、事業所得の場合には、一定の要件を満たす記帳を実施した場合に青色申告特別控除として65万円が事業所得から控除されます。
 ちなみに、事業主が個人の確定申告に係る費用(税金以外)を福利厚生メニューとして就業規則に規定し、負担する例もあります。納税に関する社会的責任を重視する姿勢が評価されることは勿論のこと、自律的で創造性に優れた人材を確保する戦略として副業等を積極的に利用している例でしょう。

【解説】
 当職も金融機関に勤務していた時、税理士を兼業していました。会社員VS税理士の収入は9:1程度だったでしょうか。当時は勤務していた会社を「一番大きな顧問先」と考えていました。働き方改革真っ盛りの今となってみては、流行の最先端(というよりは、流行の先を走り過ぎていた…)自分が誇らしくもあります(笑)。

 さて、“【結論】2.留意点”の通り、副業の税務については、その所得区分が「事業所得」なのか「雑所得」なのかが大きな問題となります。法律に明確な規定がないため、国税不服審判所の裁決例、裁判所の判例によって判断するしかありません。裁決例及び判例のポイントを要約してみました。

  • 1. 自己の計算と危険においてする企画遂行性の有無→(口語訳)自分のお財布から必要な経費は支払い、損したら自分で被るのであれば事業ですよ。そして、その副業等が本業になってもずっと続ける意思がありますか。
  • 2. 精神的肉体的労務の投入の有無→(口語訳)片手間では事業としては認めませんよ。
  • 3. 人的・物的設備の有無→(口語訳)自分で用意した事業を行う場所、設備はありますか。
  • 4. 職業・経験及び社会的地位→(口語訳)事業をするための資格、経験、そしてあなたを必要とするお客様はいますか。
  • 5. 社会通念→(口語訳)実務的にはこれが一番大事。他所様から見て、あなたは事業主に見えていますか?

 以上を総合的に勘案して「事業所得」もしくは「雑所得」かを判断します。

 政府は「終身雇用」から「副業等の推進」に舵を切りました。これからはサラリーマン社会も費やした時間中心→成果中心、つまり成果主義に替わることは必至です。それも急速に。
 モデル就業規則の注釈には、「就業規則の規定を拡大解釈して、必要以上に労働者の副業・兼業を制限することのないよう、適切な運用を心がけていただくことが肝要です」との記載があります。当職はこの記載に政府の副業等推進に関する並々ならぬメッセージを感じました。
 最後に、税制が「働き方改革」の足かせとならないことを祈るばかりです。

もう使えない!謎の「軍用地控除」
2017年04月30日

 全国的には知られていないと思いますが、沖縄の所得税確定申告では「軍用地控除」が一般的に適用されています。
 軍用地控除とは、【公用地(軍用地)料-地主会会費】の1割を収入から控除しても税務署はそれを認めるというローカルルールです。その起源についての真偽は確かめようがありませんが、かつて「税制調査会のドン」と称され、選挙区でもない沖縄とつながりの深かった自民党の大物政治家だった山中貞則さんの沖縄の基地負担に配慮した鶴の一声だと言われています。
 もちろん、法律には軍用地控除なる規定は存在しません。当職が沖縄に来て間もない頃、相談員として税務署主催の確定申告相談に従事した際、税務署職員から「指導員の皆さんへ」というマニュアルを渡され、そこに「公用地の10%はOK」との記載がありました。現場の税務署職員に「これって何ですか?」と質問したところ、このローカルルールを説明してくれた訳です。
 あらためて言うまでもなく、税の大前提は租税法律主義(憲法84条)です。法律に規定のないいかなる取り扱いも税に関しては不可な筈です。今では考えられませんが、かつて政治的(超法規的)に導入され、それが今日まで沖縄の課税実務として継続してきたのでしょう。
 そのローカルルールについて、先日催された税務署との定例会議の席上、平成29年分の所得税確定申告からは適用を認めない旨の説明が税務署側からありました。納税者の意識の向上等、理由は色々あるのでしょうが、やはり沖縄県と国との関係がこじれているこの時期にこのような見直しが行われるということは政治的な思惑も見え隠れします。もっとも、政治的配慮によって導入された制度が政治的に手仕舞いする訳ですから、ある意味道理に適っているとも言えるでしょう。当職のように法的根拠のない軍用地控除ではなく「損金実額控除」を推進してきた税理士からすれば、ようやく制度が改善されたというのが正直な気持ちです。
 さて、そもそも軍用地控除は、実額控除をしている納税者には適用されませんでした。例えば、軍用地料としての不動産所得の他に事業所得があって、税理士に記帳代行や確定申告書の作成を依頼している場合、税理士への支払いは経費として実額控除になりますが、軍用地控除は適用されません。一方、軍用地収入が主たる収入で、税理士に確定申告書の作成を依頼していない場合は、経費の支払いがないのにも関わらず軍用地控除が適用されるという大変有利な制度になっていた訳です。ちなみに、軍用地収入が10万円でも1000万円でも軍用地控除は原則1割であることには変わりありません。この点でも税の基本原則である平等の原則に著しく反することは言うまでもありません。
 ちなみに、政治的配慮はそれとして、なぜ会計検査院や税理士会等、政治的に中立的な機関がこのローカルルールを看過してきたのでしょうか。国税庁、国税局、税務署は行政機関なので、内閣を組織する政権与党の意向を酌まざるを得ません。このような国の権力構造の下では、いかに優秀な税務官僚で組織される国税庁であってもその自浄作用を期待することはできません。
 この点、特に会計検査院は消費税益税問題等の税法の抜け道にも従来強い関心をもって指摘してきました。沖縄の軍用地控除のような法定外ルールについて、もし他の地域や団体にも存在するのであれば、国家財政に及ぼす影響と適正性の指摘に果敢に挑んでいただきたいものです。
 また、我々税理士についても、税理士法第1条に規定する「独立した公正な立場」で、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図るという使命を再認識する必要があるでしょう。その理由は、全ての納税者は法の下で公平に扱われるという前提で税務が成り立っているからです。この前提が崩れれば、法定外ルールやインターネットに溢れる税金に関する出所不明な情報によって税務の安定性が損なわれ、最終的にはその不利益は納税者が負うことになるからです。納税者の代理人である税理士には、「税務は法の下で公平である」という理念を通じて、そのような不利益から納税者を守る職責があります。

 さて、実務として軍用地控除廃止後どうするかですが、税理士に依頼している場合にはその支払い報酬を実額で経費とすれば良いでしょう。また、実額控除する支払いがない場合には、所得税の青色申告承認申請を行った上、要件を満たした上で10万円控除等を適用することになるかと思います。

【ご相談事例】共有名義の場合65万円 or 10万円?
2017年04月08日

【ご相談内容】
 兄と共有名義(50:50)で12室のワンルームマンションを貸付し、その不動産所得があります。それぞれが青色申告をしていますが、二人ともが65万円の青色申告特別控除を適用することはできるのでしょうか。

【結論】
 可能です。

【解説】
 ご相談の趣旨は、マンションを二人で共有している場合の「5棟10室基準」について部屋数を按分する必要の有無だと思われます。
 前回(3月26日付け最新のお知らせ)でご説明したように、租税特別措置法(第25条の2)では、65万円の青色申告特別控除の適用要件について次のように規定しています。

  • 1. 不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営む青色申告者であること。
  • 2. 正規の簿記の原則に従い取引を記帳していること。
  • 3. 貸借対照表、損益計算書、その他の計算明細書等を添付し、所定の事項を記載した申告書を期限内に提出すること。

 確定申告については税務署の考えを「忖度(そんたく)」した処理が散見されますが、税金の計算に関しては法律から逸脱することはあり得ません。 65万円の青色申告特別控除の適用要件も税法に規定されている通り、これ以上でもこれ以下でもありません。
 もちろん、「各自の持分ごとに部屋数を判断」などと言ったことはどこにも書かれていません。また、条理(物事の道理)を考えても、共有にすることによって不動産貸付事業に関する帳簿作成の手間はかえって増えるでしょう。

 税務署には確定申告書を見直して、税金を多く支払っている納税者に連絡する義務はありません。したがって、実際のところ65万円控除が可能であるにも関わらず「各自の持分ごとに部屋数を判断」し、10万円控除を選択されている方は多くいらっしゃるようです。

 それでは過去に遡って訂正すること(更生の請求)は可能でしょうか。答えは「上記1~3の要件を満たしていれば可能」です。更正の請求は過去5年に遡って(原則として法定申告期限から5年以内)可能なので、最大275万円(「65万円-10万円」の5年分)の所得が減額される可能性があります。

【ご相談事例】不動産所得(黒字)、事業所得(赤字)の場合65万円 or 10万円?
2017年03月26日

【ご相談内容】
 アパート2室の賃貸収入があります。今年はお店(飲食業)が赤字になってしまう見込です。この場合、青色申告特別控除65万円は事業所得から引くことができないので、不動産所得には5棟10室基準に満たない場合の青色申告特別控除10万円しか適用できないのでしょうか。

【結論】
 65万円を控除することができます。

【解説】
 租税特別措置法(第25条の2)では、65万円の青色申告特別控除の適用要件について次のように定めています。

  • 1. 不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営む青色申告者であること。
  • 2. 正規の簿記の原則に従い取引を記帳していること。
  • 3. 貸借対照表、損益計算書、その他の計算明細書等を添付し、所定の事項を記載した申告書を期限内に提出すること。

 また、控除額は次の1、2のうちいずれか低い額になります。

  • 1. 65万円
  • 2. 青色申告特別控除額を控除しないで計算した不動産所得の金額又は事業所得の金額の合計額(これらの所得のうちに赤字のものがあればゼロとして計算)

 つまり、65万円控除適用要件の結論は、「事業所得を生ずべき事業を営んでいて(黒字でなければいけないなんてどこにも書いていない!)、正規の簿記を行い(家電量販店等で購入できる数千円の会計ソフトが自動で集計してくれる会計処理が正規の簿記!)、貸借対照表、損益計算書等(先ほどの数千円の会計ソフトが自動で作成してくれます!)を添付した申告書を期限内に提出(申告期限に遅れたら10万円しか控除できません。注意!)」となります。

 現状、5棟10室基準に満たない大家さんにとっては、新たに事業所得を得ることができるお仕事を開始することが節税のヒントになるかもしれません。
 ちなみに、会社員の方が副業で得ることができる所得については、税務署から「事業所得ではなく雑所得ですよ」と指摘を受けるケースがあります。実際問題として事業所得 or 雑所得の区分に関してはグレーな部分があり(いわゆる総合的に勘案するため)、税理士でもその見解に差が生ずることがあります。微妙だな、と感じられたら税理士に相談してみてください。

【ご相談事例】出張手当に関する所得税の考え方
2016年03月15日

 出張の際に従業員や役員へ手当を支給することは一般的だと思います。一方、具体的な支給額についてはその金額の多寡について「もやもや感」を持ちつつ決めていることが多いのではないでしょうか。そこで今回はこの「もやもや感」を解消するために根拠法令等を参照しながら出張手当を整理しましょう。

● 所得税法上の出張手当の定義
 所得税法上の出張手当の入り口は給与所得であるということを確認します。ちなみに事業所得など給与所得以外の所得については、手当という概念すらあり得ません。その理由は、手当とは雇用された従業員等が支払う業務上の負担を、業務上必要な経費は原則として雇用主が負担するという考え方で補填されるものだからです。事業主 は自分のリスクで事業をしている、つまり雇われているわけではないので、業務上必要な経費を雇用主から当然に支給されるという考え方がそもそもないからです。
 給与所得とは、従業員や役員に支払う俸給や給与、賃金、歳費、賞与の他、これらの性質を有するものをいいます。そして給与等は原則として所得税の課税対象となります。その原則課税の例外規定として、「出張などのための旅費のうち、通常必要と認められるもの」が非課税給与(手当)として規定されています(所得税法9条1項4号)。この「出張などのための旅費のうち、通常必要と認められるもの」が所得税法上の出張手当の定義です。
 この所得税法の条文は出張手当を検討するにあたってとても大切ですので全文をご紹介します。
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所得税法第九条 次に掲げる所得については、所得税を課さない。
四 給与所得を有する者が勤務する場所を離れてその職務を遂行するため旅行をし、若しくは転任に伴う転居のための旅行をした場合又は就職若しくは退職をした者若しくは死亡による退職をした者の遺族がこれらに伴う転居のための旅行をした場合に、その旅行に必要な支出に充てるため支給される金品で、その旅行について通常必要であると認められるもの
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● いくらまでが所得税非課税の出張手当なのか
 出張等のために従業員等が負担する費用のうち、その旅行について通常必要と認められるものが非課税出張手当だということがわかりました。では、具体的にその金額はいくらなのでしょうか。結論から言えば、その支給を受けた者の職務を遂行するために行う旅行の実情に照らして考えるということになります。例えば職位に関しても、役員の職務遂行と一般従業員のそれとは通常異なります。取引先、あるいは社内的にもその期待される職務遂行内容(責任と権限)は異なるからです。役員であれば役員として期待される服装、出張がなければ必要のなかった消耗品の類、出張先での情報収集費用、活動範囲があります。このような職位ごとの期待が明らかになればその出張手当の金額もおのずと決まるでしょう。実務を通しての当職の感覚では一般社員で一日当たり3,000円程度、そしてこれを基準として給与差、出張目的等を勘案して職位ごとの出張手当を定めるのが合理的だと考えます。
● 出張手当規程の必要性
 このように出張手当が非課税であるためには、その金額が合理的に定められ、会社として統一して運用されているかに尽きるでしょう。そのためには出張手当規程の備えが不可欠であると考えます。例えば次のような所得税法基本通達があります。
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(年額又は月額により支給される旅費)
28-3 職務を遂行するために行う旅行の費用に充てるものとして支給される金品であっても、年額又は月額により支給されるものは、給与等とする。ただし、その支給を受けた者の職務を遂行するために行う旅行の実情に照らし、明らかに法第9条第1項第4号《非課税所得》に掲げる金品に相当するものと認められる金品については、課税しない。
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 この通達は年額又は月額で支給される出張手当は出張手当という名目で支給していても原則給与ですよ、課税しますよ、と言っています。しかし、この通達の後段では、その支給を受けた者の職務を遂行するために行う旅行の実情に照らし、明らかに法第9条第1項第4号《非課税所得》に掲げる金品に相当するものと認められる金品については、課税しないとし、例外をうたっています。この通達の前段(課税)、後段(非課税)を客観的に明確にする方法の一つとして、出張手当の規程化(文書化)が有効であると考えます。規程化すれば、何が合理的な金額なのか、通常必要であると認められるものか、についてその都度税務当局に疎明をする必要はなくなるでしょう。
 従業員等に対して安定した所得税非課税である(税務調査官に給与として事実認定されない)出張手当を支給するためにも、税務調査官への疎明負担を低減するためにも、旅費規程の整備及び文書化は不可欠だと思われます。
● 出張手当は消費税の対象か
 最後に出張手当に関する消費税の課税関係を確認したいと思います。
 結論から言えば、その旅行に通常必要であると認められる部分の金額だけが仕入税額控除の対象となります。その通常必要であると認められる部分の金額の範囲は、所得税が非課税であるかどうかにより判定を行います(消費税法基本通達11-2-1、所得税法基本通達9-3)。
 つまり、出張手当に所得税が課されると源泉徴収の対象になるばかりではなく、消費税の観点でも仕入税額控除が使えないという二重の不利益が従業員等と事業主に生じることになります。充分に注意してください。

 

【注】
この文章は当職の法令解釈に基づくものです。実務への適用に関しましては顧問税理士等にご確認することをお勧めします。

市販薬に関する所得税軽減について
2015年11月20日

 11月20日(金)日本経済新聞朝刊で、厚生労働省と財務省が市販薬について早ければ2016年から家族合わせて年1万円を超える支払いをした場合は所得税を減らすことができる制度を与党に提案する旨の報道がされています。来年は参議院選挙が控えているため、このような社会保障費の削減という減税財源が見込める案は実現の可能性が高いと思います。

  現在でも市販薬についておなじみの医療費控除で所得税を減らす方法は有りますが、医療費控除は原則として年10万円を超える支出が控除額であるため、実際にはそれほど減税の恩恵を受ける家庭はありませんでした。しかし、厚労省は今回の減税案の対象は1000万世帯(日本の世帯数は5200万世帯ですので、約2割の世帯)を超えると予想しているそうです。

 現在の薬の購入については、「病院や診療所で処方される薬は7割引で買える」という制度です。もちろん病院や診療所で処方される薬は医療用医薬品ですので、有効成分の質と量は市販薬とは異なります。この違いを薬局(薬剤師)が購入者に説明したうえで、購入者が納得して通院することなく市販薬を購入しても何ら問題はありません。薬局を訪れる方の中には、病院へ行く機会費用(病院に行く時間を働いた場合に得ることができるお金)を考えると薬局で購入できる市販薬の方が実質的には安価という方が少なからずいるはずです。これが今回の減税案によって所得税、住民税、健康保険税が減るため、従来の病院(医療用医薬品)VS薬局(市販薬)での実質薬価の差はかなり縮小するとみてよいでしょう。

  今回の減税案の成否は、「薬局での薬剤師による健康相談の充実」にかかっているといっても過言ではありません。今後は、健康相談の充実を図るとともに、薬局経営における原価率の低減、市販薬以外の健康関連商品の品揃え、質の高い健康相談のための設備及び人材への投資、薬剤師の専門分野、経験及び経歴の開示、さらに薬剤師のパーソナルマーケティング(親しみやすさのアピールや「あの先生に健康相談したいから来店する」といった動機付け)等、来店者との信頼関係を一層密にする経営が必要な時代になりました。

 今回の減税案の政策目的は、高齢化で増大する社会保障費の削減ですが、一方で税法はこんなところでも税金を通じて私たちの習慣や薬局との関わり方を変える役割を担っているのです。

確定拠出年金制度をご存知ですか?
2015年04月27日

 意外と知られていませんが、この制度には次のようにかなり有利な税制上の優遇措置(節税)があります。

1. 掛金全額が所得控除対象(つまり、掛金が経費になるわけです)
【ご参考】
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/kyoshutsu/kazeigaku/kojin-nenkin.html

2. 運用により得られた利益は非課税

3. 受給時も退職所得控除や公的年金等控除の対象

 掛金は元本保証でも運用可。詳しくはお取引金融機関や税理士へ。