【ご相談事例】自分と妻の亡き後、財産を母校に寄付したい(3)

【解説(前回の続き)】
 第1回の【結論】では、相続財産の非課税について、遺贈と相続財産からの寄付の2つの方法をご紹介しました。さて、何故税法はこの2つの方法を用意したのでしょうか。当職は配偶者への配慮が主な目的だと考えています。

 相続税法では、相続財産には一方配偶者の貢献分が含まれるという考えに基づいて、配偶者の税額軽減制度が設けられています。さらに、仮に一方配偶者の貢献分を相続発生前に相続財産から切り離したいのであれば、配偶者控除を利用し、生前贈与でそれを実行しておいてくださいね、といったように一方配偶者に対するかなり手厚い優遇規定が設けられています。いわば「夫婦共同主義的な制度」です。
 一方で、民法では遺言書に基づく遺贈を最優先にして遺産の承継が実施されます。遺贈は本人の意思を最優先する「個人尊重主義的な制度」と言えるでしょう。

 上記の相続税法と民法の趣旨を調和的に鑑みた制度が、租税特別措置法70条に規定する遺贈又は相続財産からの寄付という2つの制度の存在意義だと思います。
 措置法の趣旨を最大限利用するためには、夫婦で協力し、遺贈という強力な個人主義に基づく手段を講じさせない関係を築いておくことが大切です。このような信頼関係を築けておけば、残された一方配偶者が、配偶者亡き後の豊かな生活を実現した上で、残された一方配偶者の夫婦最後の遺贈によって、既にこの世にいない配偶者の想いも実現することができるわけです。

 そしてなによりも、子がいる場合です。
 その子が親の意思を尊重し、「相続財産からの寄付」をしたとしましょう。当職は思います。親からの相続財産をあてにせざるを得ないような立場ではなく、経済的社会的に自立した成功した子に育ったこと、これが子への最大かつ最強の相続であると…。