【ご相談事例】遺産分割協議が土地の評価額で難航

【ご相談内容】
 ご相談者Aさんは妹と遺産分割協議を始めました。主な遺産は不動産です。先祖から沖縄在住である長男Aさんは先祖伝来の土地を相続する必要があるため、妹には不公平になる分を現金で償うことにしました。ここで問題になったのが土地の評価額です。Aさんはそれを3000万円と計算し、妹は5000万円であると主張して譲りません。土地の価格を高く見積もるほど妹が受け取る代償金は多くなります。どのようにすれば良いでしょうか。

【結論】
 土地の評価方法は複数あり、遺産分割にあたってどの評価方法を使用するかについては当事者が合意さえすれば自由です。家庭裁判所での調停の場合には、固定資産税評価額を基に評価することで良いか調停委員会が当事者に確認し、納得できない当事者が資料や証拠を提出して反論するといった流れになっているようです。
 ちなみに倍率方式が適用される土地に関しては、そのまま固定資産税評価額を使ってしまうと時価と固定資産税評価額とのかい離が大きくなっているので注意が必要です。

【解説】
 土地の評価に関して調停実務(調停委員のための遺産分割基本マニュアル 大阪家庭裁判所 家事第3部 遺産分割係)では、調停委員会が当事者に対して固定資産税評価額を基に評価することで良いか確認し、納得できない当事者については他の資料(例えば、相続税評価額(路線価)、不動産業者の見積書(査定書)等)の提出を促しているようです。
 最終的に当事者間の合意に至らない場合には裁判所が選任した不動産鑑定士の鑑定が参考にされます。この場合の鑑定費用は当事者負担になります。
 また、相続税の申告が必要な場合には税理士が税額算出のために土地の評価を行っています。税務上の評価基準(財産評価基本通達)は時価とのかい離が比較的少ない上、土地の個別事情を補正という形で調整しています。したがってこれをもとに遺産分割協議を行っても良いでしょう。

 ちなみに、【結論】で述べた「倍率方式」とは、固定資産税評価額に国税局長が一定の地域ごとにその地域の実情に即するように定める倍率を乗じて計算した価格によって評価する方式をいいます。つまり、相続税や贈与税の計算では固定資産税評価額が(安すぎて)そのまま使うことは適切でないので、相続税等の申告には固定資産税評価額を何倍かしてそれを「適正な時価」として使ってくださいね、という趣旨の規定です。地方部は倍率方式が適用される土地が多いので注意してください。
 当職は遺産分割調停で当初から倍率方式が考慮される事例は少ないと感じています。したがって、利害が生じる当事者から積極的に倍率方式に基づいた評価額の増額を主張する姿勢が必要だと思います。