【ご相談事例】妻の死後、妻の子ではなく、自分の甥等に相続させたい

【ご相談内容】
 私には子がなく、現在の妻にはその前夫との子がいます。私としては会ったこともない妻の子ではなく、自分の甥や姪に確実に相続させたいのです。なにか良い方法はないでしょうか?

【結論】
 信託(受益者連続型信託)で相談者のご希望を実現することができます。

【解説】
 相談者の心配は、この事例で相談者が妻より先に死亡した場合、民法の規定では妻が相談者の財産を相続し、妻の死亡後は妻の法定相続人である前夫との子へと相談者の財産が渡ってしまうということです。
 確かに、会ったことすらない人に自分が苦労して築き上げた、あるいは、自分のご先祖様からの財産が相続されることには抵抗感があるかもしれません。さらに、妻に子がない場合であっても、妻の兄弟姉妹、尊属(親等)に相続権が発生し、相談者の血族以外に相談者の財産が相続される可能性に留意する必要があります。

 民法では後継ぎ遺贈(遺言書による贈与)は無効という見解が有力です。つまり、たとえ相談者が遺言書を作成したとしても、その遺言書で可能なのは、あくまでも妻への遺贈の話。妻が遺贈で得た相談者の財産について、相談者が遺言書によって二次的に特定の人物を指定することは実質的には不可能と思われます。
 このような、今までの相続の常識では解決不能であった相談者の心配を解決する手段が信託(民事信託。法律用語ではありませんが、以下、家族信託と称します。)です。今回は家族信託のご紹介にとどめ、具体的な信託行為(信託契約、遺言信託、信託宣言)と信託の組成については折を見て解説したいと思います。

 一点、家族信託で留意することは、不動産については信託契約の内容が信託条項として不動産登記法に基づいて登記され、誰でもその内容を知ることが可能になるということ。不動産登記法では、全ての信託契約の内容を信託条項として登記することまでは規定していません。不要な争いを避けるためにも「登記の第三者対抗要件効果」と「プライバシー保護の必要性」との均衡を考慮することは、信託に関わる専門家が最新の注意を払うべき事柄と言えるでしょう。

 また、改正信託法の施行は2007年(平成19年)9月と比較的最近ということもあり、専門家の中には信託を十分に理解できていない先生、さらには信託組成未経験の先生も多数おられるようです。信託は芸術作品にも例えられるように、その創造力ときめ細やかさによって出来具合が全く異なります。さらに、未だ判例が少ないことや制度が新しいこともあって、過去の経験則や常識があまり役に立ちません。したがって、安易に顧問税理士等だからということで信託組成を依頼してしまうことは禁物です。
 当事務所でも受任した家族信託の組成について、一定の品質を保つことは当然としながらも、受任の都度、より良い家族信託を組成すべく日々研鑽と研究を重ねているというのが正直なところです。