第3回、4回では概算経費特例を使用する際の注意点を解説します。
1. 概算経費特例使用に当たっての注意点(その1)
● 後出しじゃんけんは認められない。
「後出しじゃんけん」の具体例は次のようなものです。
医院の事務を担当している奥様が、租税特別措置法第26条を適用して事業所得の計算を行い、確定申告を提出期限までにしました。その後、税理士関与が始まり、過去の申告を確認したところ、概算経費より実額計算の必要経費の方が多くなることに気付きました。この場合、残念ながら実額計算による更正の請求、つまり税金の払い戻しはできません。
また、上記と逆のケース。例えば医療関係の税務代理経験がない税理士が、措置法第26条の不知によって概算経費が有利であったにも拘わらず実額計算で申告してしまったケースです。この場合も法令上一旦確定申告が終了してしまえば、更正の請求不可=措置法第26条適用は不可、となってしまいます。
この税理士による失敗については、「税理士職業賠償責任保険事故事例(税理士会)平成6年~平成19年掲載事例抜粋」で公開されており、所得税、住民税を合わせた約200万円の損害賠償額全額について保険支払の対象となりました。
次回(4回目)は、概算経費特例使用に当たっての注意点(その2)として、年間社会保険診療報酬が5,000万円を超えそうな場合の考え方とその対策にふれ、一連の解説のまとめとします。