【相談内容】
5年前に友人が金融機関から借入する際に連帯保証人になりました。その借入金の返済が滞り、私が連帯保証人として借金を返済する羽目になりました。返済のためには、私が所有する不動産を売却するしかありません。
妻にも今回の件を知らせない訳にもいかないので話をしたところ、「税金は大丈夫なのでしょうね…」と言われ、役場の無料税金相談会へ赴きました。そこでは無料相談と言うこともあってか、課税の可能性があるかもと言われるだけで詳しい説明はいただけませんでした。連帯保証人としての責任を全うするために自分の資産を売却し、本当に税金を払う必要があるのか、理由も含めてご教示ください。
【結論】
次の要件に全て当てはまれば税金は発生しません。
- 本来の債務者が既に債務を弁済できない状態であるときに、債務の保証をしたものでないこと。
- 保証債務を履行するために土地建物などを売っていること。
- 履行をした債務の全額又は一部の金額が、本来の債務者から回収できなくなったこと。
【解説】
保証債務を履行するために土地建物などを売った場合には、所得がなかったものとする特例があります(所得税法64条)。この場合の所得とは、次の三つのうち一番低い金額です(金額は例示)。
- 肩代りをした債務のうち、本来の債務者から回収できなくなった金額 1000万円
- 保証債務を履行した人のその年の総所得金額等の合計額 5000万円
- 売った土地建物などの譲渡益の額 3000万円
債務者に代わって返済し、その債務者本人が仮に夜逃げして1000万円を踏み倒されたとしましょう。この場合には、保証した債務を肩代わり返済するため売却した土地建物の譲渡益3000万円から所得税法64条で所得と見做さない1000万円を差し引いた2000万円については課税対象所得となります。つまり、5000万円-1000万円=4000万円が保証債務を履行した人のその年の総所得金額となります。
保証債務の特例については、計算自体は比較的簡単です。難しいのは本来の債務者から回収できないこと、専門的には求償権消滅の証明でしょう。この点、本来の債務者が自己破産している、失踪宣告を受けているのであれば問題なく回収不能と言えるでしょう。
保証債務の特例を巡る国税不服審判所の裁決や裁判所の判例でも、その多くが求償権消滅の是非を巡る争いです。求償権消滅については、所得税基本通達である程度の目安が示されています。しかし、証拠集めの巧拙、客観性の確保が審判等での勝ち負けに直結することから、当職の経験では債務者の返済能力が不透明ならば、早めの弁護士への相談、裁判所での調停申立を検討された方が無難だと思います。