【相談内容】
先週税務顧問をお引き受けしたA様からのご相談です。ご当人の承諾を頂いたのでご紹介します。
「私は3年前、住んでいたマンションの一室を転勤の為にやむなく賃貸に出し、賃料を得ています。
昨年の6月に脱サラしてIT関連の仕事を個人事業で開始しました。開業届は6月中に税務署へ提出しました。今回の仕事については、事業という認識なので青色申告で行おうと思い、提出期限が事業開始後2か月以内ということから、7月最初の週に個人事業の青色申告承認申請書を税務署へ提出し、翌年の確定申告期間中に青色申告を済ませました。
ところが税務署から昨年分の確定申告は白色であるとの指摘を受けました。新規開業から2か月以内に青色申告承認申請書を提出したのに納得できません。」
【結論】
残念ながら昨年分は白色事業者でした。今後は当職が税務代理人になりますのでこのような行き違いは起こりません。ご安心を。
【解説】
最初に青色申告承認の要件を確認します。
1. 原則
新たに青色申告の申請をする人は、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出すること。
2. 新規開業した場合(その年の1月16日以後に新規に業務を開始した場合)
業務を開始した日から2か月以内に「青色申告承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出すること。
今回のケースは、A様が上記2と判断したものです。しかし、実際は1であった為、昨年の確定申告は白色になってしまいました。原因は、「業務」です。
意外なことですが、「業務」については所得税法上明確な規定はありません。この定義規定の不存在が、業務を巡っていくつかの混乱を招いているのも事実です。ちなみに実務では、「反復継続的に営利を目的として行われる行為(事業に至らない規模も含む)」として「業務」を定義づけることが一般的で、実際に当事務所でも「業務」に関する判断基準としてこの定義を採用しています。
したがって、たとえ一室であっても、不動産貸付は不動産所得の基因となる「業務」に該当し、IT事業の開始は「業務の追加」であって新たに業務を開始したことにならないため、青色承認申請書の提出期限内に提出された申請書ではないことになります。