地方部では医療機関、医師不足と言われています。しかし、その真偽については、「医療サービスの質」の検証を抜きにして安易に判断することはできません。医療機関の数が多くても、患者がその質に満足していなければ、その地域外の医療機関を利用するでしょう。わかり易い例が、アジアの富裕層が高品質の日本の医療技術を求めて訪日する医療ツーリズムです。
沖縄も例外ではありませんが、公共交通機関が脆弱=高齢者が自家用車で移動、という図式において患者の気持ちは、受診の満足度>移動の手間、であることが容易に想像できます。
さて、ここ沖縄県北部地域においても医療機関不足が喧伝されていますが、単なる数の不足というよりは、「質の高い」医療機関の不足かもしれません。実際に当事務所の顧問先でも、高齢の医師や歯科医師が引退し、研究熱心な若手医師等が新規に医院等を開業し、今まで地域外に通院していた地域の患者さんが戻ってきた例は数多くあります。
このような若手医師等の開業を政策的にバックアップする制度が、社会保険診療報酬の所得計算の特例、いわゆる概算経費特例です。
その内容をざっくり説明すると、「医院、歯科医院の事業所得を計算する場合、年間の社会保険診療報酬の額が5,000万円以下の場合、概算経費特例(租税特別措置法第26条)により所得を計算することができる制度」です。なお、平成25年度の税制改正により、平成26年分以後の所得税については、医業及び歯科医業の収入金額(社会保険診療と自由診療の合計額)が7,000万円を超える場合には概算経費の適用は受けられないことになったことには注意が必要です。
この医院、歯科医院への概算経費特例の使い方、留意点については次回以降にご説明します。