家族信託をきちんと理解し、正しく使いこなすことは容易ではありません。
しかし最近ではテレビ、雑誌等で頻繁に家族信託が取り上げられるようになってきました。当事務所では7年ほど前から顧問先の“困った…”を解決する新しい技術として家族信託を使ってきましたが、当時は信託で知られているのは投資信託くらい。参考事例や文献もかなり限られていました。今では当時、手探りで家族信託スキームを創っていたことを少し懐かしくも感じます。
さて、資産管理や相続の観点での高齢化対策として、家族信託が当たり前のように語られるようになった今だからこそ、利用者が家族信託に対して正確な知識を持つことが非常に大切になっています。その理由は、家族信託という自動車を目的地まで運転するのはあなただからです。
家族信託を車に例えるとその本質についての理解が容易になります。日常の通勤、買い物であるなら普通自動車、取り回しの容易さや毎年の税金を考えたら軽自動車、工事現場であればダンプカー、宅配業者であればトラック、目的地までの快適さを求めるのであれば高級車、海や山のオフロード対応であればSUV、そして新車がよいのか中古で十分なのか…。使用目的や予算によって車を使い分けるのと同じように、それぞれの家族に合った家族信託も使い分けなければなりません。
ここで問題なのは、車の模倣品はそう簡単に作れませんが、家族信託はその模倣品が比較的容易に作れてしまうことです。中国で横行しているドラえもん、くまモンといったキャラクターの偽物、なにか空気感が違うし、そもそも可愛くありませんね。
家族信託についても同じです。本物はそれぞれの家族に合わせて創るものです。しかし、残念ながら、他人が創った信託スキームを、安易にコピーして販売している専門家がいるのも事実です。そのような偽物家族信託に関しては、将来的に重大な事故の原因になる、目的地にたどり着かない、あるいは誤った目的地に誘導してしまうリスクをはらんでいます。要注意です。
この解説は家族信託の「入門」ではありません。「入門の入門」です。
いまさら聞けない家族信託の基本をなるべく簡単に、当職が創ってきた(ちなみに家族信託を「つくる」の漢字は「創る」です。)家族信託を紹介しながら、具体的に、「入門の入門」として家族信託を解説していきます。
具体的解説の第1回目として、次回は「賃貸用アパートを買った!」です。登場人物は税理士の渡辺さん、わたなべ税理士事務所の税務顧問先である宮里さんご一家です。