平成28年度税制改正大綱に相続空き家に対する政策税制が記載されました。総務省統計局によれば、平成25年の空き家率(空き家/総住宅数)は13.5%。その割合は統計開始以来右肩上がりで上昇しています。
人口が増加している数少ない都道府県のうちの一つである沖縄でも、親から北部地域の実家を相続したものの、自分は那覇で勤務しているため放置せざるを得ず、現在空き家になって管理にも困っている、といったご相談をしばしばお受けします。
また、既に施行されている固定資産税に関する「特定空き家」制度によって、固定資産税が最大6倍にもなるリスクも気になるところではないでしょうか。さらには、火災の発生や建物の倒壊、衛生面や景観面での悪化等、多岐にわたる問題が生じた場合に管理者責任を問われることも心配です。
空き家についてはこのような悩みはあるものの、売却した場合、通常の譲渡所得税(多くの場合は売却価格の約20%)が課税され、現行の税制が相続空き家に対する有効活用の足かせになっていた感は否めませんでした。
税制改正の施行時期、他の各種特例との選択適用又は重複適用の措置、適用要件を証明する添付書類の種類等々については現時点では詳細が明らかになっていませんが、平成28年度税制改正大綱の中で判明している点について解説したいと思います。
【改正案の要点】
相続した被相続人の居住用不動産であった物件を譲渡した場合、「一定の場合」には3000万円の特別控除が適用できます。
【一定の場合とは】
● 家屋
昭和56年5月31日以前に建築された家屋(区分所有建物は除く)であること。
→かなり古い一戸建てということです。
● 居住要件
相続開始直前において被相続人の居住用であり、かつ、被相続人以外に居住していた者がいないこと。
→賃貸に出されていた物件は今回の改正から除かれるということです。
● 譲渡時期
相続開始日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡すること。
→早めの対策が必要です。
● 対象となる譲渡
1. 被相続人の居住用家屋の譲渡又は被相続人の居住用家屋及びその敷地の譲渡。相続発生時から譲渡時まで、事業の用、貸付の用又は居住の用に供されていたことがないこと。譲渡時において、地震に対する安全性に係る規定又はこれに準ずる基準に適合するものであること。
→空き家再生の場合はこのケースの譲渡に該当すると思われますが、耐震補強が必要なところが気にかかります。
2. 被相続人の居住用家屋を除却した後におけるその敷地の譲渡。家屋は相続発生時から譲渡時まで、事業の用、貸付の用又は居住の用に供されていたことがないものに限る。
→更地にしてからの譲渡です。現実問題としてこのケースが一番多くなるかもしれません。
今回の税制改正によって空き家の売却による有効活用が進めば、新たなビジネスが発生する可能性もあります。当事務所の顧問先の皆様の中にも、沖縄で空き家を再生させ、移住される方に提供する事業を展開されている方もいらっしゃいます。また、当事務所が今春オープンを目指して準備中のカフェも空き家を再生しているものです!
ご不明な点は最寄りの税務署又は税理士にご相談ください。