前回(2016.2.9)ご説明した相続後の不動産を売却する場合の所得税の減税措置に関して、減税を受けるための要件と必要書類が明らかになりましたのでご紹介します(租税特別措置法35条)。
【要約】
1. 相続人が共有する場合でもOK
2. 相続開始直前に被相続人が一人で住んでいたことが条件
3. 確定申告書に「被相続人居住用家屋等確認書」の添付が必要
4. 家屋を売却する場合には「耐震基準適合証明書」の添付が必要
5. 更地にして売却する場合には相続してから売却するときまで敷地を利用していないことの証明が必要
1に関しては、例えば兄と妹で二分の一ずつ共有相続した場合には兄妹それぞれが3000万円の特別控除を利用することができます。相続後すぐに売却の予定がないのであれば共有は後々の権利関係が複雑になりがちなのであまりお勧めできませんが、相続後すぐに売却するのであれば特別控除が共有者の人数分使用可能であることから、節税効果は非常に高いといえるでしょう。
2で注意しなければならないのが、相続発生時に被相続人が老人ホームに入居していた場合には適用されないということです。これは相続開始直前に被相続人が当該不動産に一人で住んでいたことが条件だからです。老人ホームに関連した被相続人の居住要件については、小規模宅地特例と取り扱いが異なるため注意が必要です。
3の確認書は空き家の所在する市区町村に申請します。自治体によっては申請してから確認書の発行まで10日以上かかる場合もあるようなので早めに対応するようにしてください。
4については建築士等に証明書を書いてもらうことになります。当事務所で取り扱った事案では5万円前後の費用がかかりました。
5は「空き家の敷地等の使用状況がわかる写真」等で証明することになります。
今回の減税措置は売却をする相続人一人当たり3000万円の所得控除という金額の大きさ、また、立法趣旨が「相続空き家の廃墟化の防止とその有効活用の促進」と読めることから、減税となる税法上の要件もそれなりに厳格になっています。裏を返せば、要件をそろえることに失敗してしまう(政策減税の趣旨に合わない)と、多額の譲渡所得税が課税されることになり、「こんなことなら売らなければよかった…」などという残念な結果になりかねません。また、今回ご紹介した他にも法律適用のための要件(例えば売却金額は1億円以下等)がありますので、手続きに自信や時間のない方は早めの専門家へのご相談をお勧めします。