表題の「その会社名で本当に大丈夫ですか?」は、当職が法人設立に関する打合せの際にしばしばご依頼人に確認する事柄です。
税理士は法人の設立段階から関与することが多いのですが、最初ご依頼人は大抵の場合、会社名についてこだわりを持っていらっしゃいます。当然のことですが、一税理士の立場でご依頼人に対してそのこだわりに異議を唱えることもその権利もありません。
しかし、多くの経営事例に日々接する立場からご依頼人に経営の助言をさせて頂くこともまた税理士の大切な職責と言えるでしょう。特に会社名は将来的には事業の象徴(ブランド)となります。ブランドは日本語で暖簾(のれん)。「のれん分け」という言葉でもお分かりのように、事業が成功した暁には、「のれん」はそれ自体に金銭的価値が生じるものなのです。
例えばカジュアルな衣料品として知名度が高いユニクロ。この法人名は株式会社ユニクロで、商号がユニクロです。ユニクロのイメージはカラフルなTシャツやポロシャツ、寒い季節になればフリースやダウンジャケットがイメージされます。比較的安価だけれども品質が良くてカラフルでおしゃれ、こんなブランドイメージが「ユニクロ」から連想されるのではないでしょうか。
会社名は1.誰もが簡単に読み書きできる、2.商品やサービスを簡単にイメージできる、3.覚えるのが簡単、という「3つの簡単」が原則です。
悪い例をご紹介しましょう(あくまでも当職の私的見解です)。
● 符号が含まれる会社名(1に反します)
「&」(アンパサンド)、「’」(アポストロフィー)、「,」(コンマ)、「-」(ハイフン)、「.」(ピリオド)「・」(中点)等。
● 一般的ではない濁音、小さいカタカナが含まれる会社名(1に反します)
ヴォ等。
● 長い会社名(1と3に反します)
領収書の宛名を書いてもらう場合、電話で会社名を名乗る場合に面倒です。そもそも覚えてもらえないので営業上不利です。
● 当て字(単純にダサい!)
夜露死苦【よろしく】、愛羅武勇【あいらぶゆう】等。暴走族が好みそうですね。
● 会社の規模や信用を過大に見せたい意図が透ける名称(2の悪用した粉飾)
XX協会、XX協議会、XX総合、XXセンター等。このような語句を会社名に入れたがる事業主さん には往々にして事業に対する自信のなさが見え隠れしています。大きな会社=信用できる、というイメージは、重厚長大型産業が花盛りであった昭和の遺物でしょう。
その会社名、お客様目線で考えましたか?会社名を書くときに相手方にその名前の書き方をその都度説明していませんか?
法人設立手続は夢の第一歩ということもあり、それ自体気分が高揚するものです(当職は嫌々会社を設立する方にはお目にかかったことはありません)。だからこそ、会社名については自分のこだわりを一旦横に置いて他人の意見も尊重し、慎重に検討することが大切だと思います。