税理士業務を通じて経験したヒヤリハットに加えて、当事務所がお引き受けした相続に関する案件、セミナー等を通じて皆様からいただいたご質問の中から、専門家の常識と世間のそれが異なるケースを「案外盲点!」シリーズとしてご紹介していきます。トラブルの予防としてお役立てください。
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案外盲点!「遺産分割協議」まえがき
案外知られていないことですが、民法(第882条~第1044条)では遺産分割について、被相続人(亡くなった方)の意思を優先的に尊重するため、原則として遺言書によって遺産を各相続人に分けます(但し、相続人全員の同意があるときには、全相続人の協議(遺産分割協議)による分割も可)。したがって、遺産分割協議の法的立ち位置は、遺言書が存在しない場合に、次の手段として、相続人間の話合いで遺産を分割する手続と言えます。つまり、遺産分割の手段として、遺言を主とするならば、協議はあくまでも従たる存在にすぎません。
しかし実際には、遺言分割の割合は約1割(人口動態統計の年間推計(厚生労働省)、日本公証人連合会統計、司法統計から算出)にすぎず、我が国では協議分割での相続手続が未だ主流と言えるでしょう。
このため、相続税に関する税務代理や財産管理業務をお引き受けする税理士は、遺産分割協議手続、そして協議が成立しない場合の法的手続き(調停、審判)を十分に勘案した上で、該当事案に関する説明責任を果たす必要があります。この対応が不十分である場合には、専門家責任の観点から損害賠償のリスクが生じるでしょう。
これからシリーズで、当事務所がお引き受けした相続に関する案件、セミナー等を通じて皆様からいただいたご質問の中から、専門家の常識と世間のそれが異なるケースを「案外盲点!」シリーズとしてご紹介していきます。当事務所に蓄積されている「経験」を皆様のトラブルの予防としてご利用いただければ幸いです。
この経験の中には、「もう少しうまくできたのでは」といったものも敢えて含めました。その意味は、わたなべ事務所の大切な理念として、「失敗から謙虚に学ぶ」ことをモットーにしているからです。
次回は早速本論に入ります。テーマは、案外盲点!「遺産分割協議の難易度、実は「難関」」です。