さて、家族信託をどのような場面で使うのかについて、沖縄県名護に門中(注)がある宮里さん一家の例で解説していきます。登場人物は、次の7名です。
🚹 宮里お父さん(75歳)
🚺 宮里お母さん(73歳)
🚹 宮里長男さん(47歳)
🚺 宮里長男さんの長女(20歳)
🚹 宮里長男さんの長男(18歳)
🚺 宮里長女さん(45歳)
👨 渡辺税理士
(注)門中
読み方は「ムンチュウ」。門中は日本では沖縄特有の家制度で、始祖を共通とする父系血縁によって結び付いている親族集団のこと。清明(シーミー)や旧盆といった門中行事の季節の大渋滞が象徴的で、普段は仕事で門中から離れた場所で暮らしていても、門中行事の際には皆が集まって門中を再確認する習慣は現在でも受け継がれているようです。
今日は旧盆の最終日(ウークイ)でいつもは那覇や浦添にいる皆さんがお仏壇のある名護の実家に集まっています。そこで、宮里お父さんから突然の発表です。お盆は普段は疎遠な方、ご先祖様も一堂に会するので、相続、贈与等家族にとっての重要案件が話し合われるのは、「沖縄あるある」でしょう。
ちなみに、資産管理に関与している顧問税理士も「争族回避のために事前に家族全員に知らせておいた方がよいかも」と考えた相続及び贈与計画、資産処分等について、旧盆前に論点整理して、顧問先にご指導するように配慮するのが一般的だと思います。
🚹 宮里お父さん「みんなには黙っていたんだが、母さんと相談して御先祖様から受け継いできた宇茂佐の森の土地、あそこにアパートを建てた」
🚹 宮里長男さん「ええっ?!」
🚺 宮里長女さん「聞いてない!」
🚺 宮里お母さん「よくよく考えての事なのよ。2年位前、銀行でお父さんが死んだ後の相続税について個別相談会があったの。そして相続税の金額を聞いてビックリ。その時に、銀行からお金を借りて賃貸用アパートを建てると、相続税が節税できるって聞いたわけ」
🚹 宮里長男さん「でも借金はお父さんが生きている間に返せるのかな?」
🚹 宮里お父さん「それは心配しなくてもよい。銀行とアパートの建築業者によれば、名護は観光関係や公共事業でこれからも人口が増えるようだし、賃料から借入金は返済しておつりがくるよ」
お盆の席でサプライズです。本当に宮里お父さんとお母さんの考えるようにうまくいくのでしょうか。いろいろ問題がありそうです。
次回に続く…。