日本経済新聞(2019.02.06)が一定期間災害保障重視型定期保険「ネオdeきぎょう」やその他「節税保険」に関して次のように報じています。
「第一生命ホールディングスや大同生命保険など生命保険各社が節税目的での加入が増えている経営者保険を4月から見直すことがわかった。」(以上、日本経済新聞からの引用。)
今回の報道で対象となっている保険商品については、速やかに保険代理店担当者に今後の取扱いを確認するとともに、解約等の意思決定については税理士等の専門家に相談することをお勧めします。
さて、今回見直しの対象になっている保険商品は、保険代理店や銀行が節税になるという触れ込みで営業攻勢をかけていたものでした。ちなみに、当事務所顧問先等から当職へ当該「節税もどき保険」のご相談があったときには次の理由をご説明し、契約に当たっては再検討するようにご指導していたところです。
- この節税保険の実質は税が安くなるのではなく、税の支払いを先送りしているに過ぎないこと。そして、先送りした年度に解約返戻金に見合う経費が発生しなければ何の意味もないこと。
- 解約返戻金が最大(87%程度)になるまで10年程度保険料を払い続ける必要があること。
- 掛捨て部分は13%程度になり、決して少ない金額ではないこと。
- 昨年から金融庁や国税庁が「節税保険」を問題視しており、このような場合には近い将来に法令改正リスクが予想されること。
上記1~3の事例は次の通りです。
目先の100万円の課税所得を減らすために、年100万円の保険料を払い込み、解約返戻率が最大になる10年後に保険を解約すると節税になるという謳い文句で契約した事業主。
課税所得を毎年達成することは容易ではなく、10年の中で半分の年度は赤字でした。さて、10年後、ようやく解約返戻率がピークになったので、「節税保険」を解約しました。
この時点で払い込んだ保険料1000万円に対して、戻ってきた金額は870万円。そもそも目的が節税だけだったので、130万円はいわば節税のための手数料です。
さらに税務上厄介なことは、戻ってきた870万円は課税所得であるということ。この年に繰越欠損金があるか、予期せぬ費用、役員退職金の発生等がなければ、戻ってきた870万円にそのまま課税されます。
保険の営業は契約時に「10年後の退職金の支払いと相殺されるから大丈夫!」と営業トーク滑らかでしたが、よくよく考えれば自分はまだバリバリの現役で退職なんて到底考えることはできません。ちなみに実体のない退職については税務署が目を光らせているので不可…。
昨今は保険代理店だけではなく金融機関もこのような「節税もどき保険」の販売に熱心です。ちなみに、当職は生命保険の節税効果を否定する者ではありません。ただ、超多忙で熟慮する時間の取れない事業主が「節税もどき商品」を購入し、経営が誤った方向に進むことを税理士として看過するわけにはいきません。賢い節税をしつつ事業に集中し、その結果業績が向上し、結果として良き納税者となることが本筋なのだと思います。