表題について、経理事務簡素化の流れもあり、手当として立替経費相当額を含めた金額を従業員等に支給する方法があります。このような経理事務は事務簡素化という利点の一方、税金及び社会保険料の観点から会社と従業員等の両方に不利になる場合があります。ここで今一度、手当及び立替経費を主に税務の観点から整理したいと思います。
1. 手当
(ア)従業員等に金銭的、身体的、精神的な負担をお願いする代償として、あるいは従業員等の個人的な努力によって取得した業務上有用な技能、資格等に対して、その努力に報いるために事業主が金銭的に報いるもの。
(イ)例えば、出張手当、危険手当、資格手当等。
(ウ)出張手当については、「その旅行について通常必要であると認められる部分の金額(この範囲については、所得税法基本通達9-3《非課税とされる旅費の範囲》をご参照ください」は課税されません。
(エ)これらの手当の勘定科目は原則として給与に分類。
(オ)手当は原則として所得税、住民税、社会保険、労働保険の対象。例外としては(ウ)に挙げた出張手当があります。
(カ)消費税法上、手当は不課税取引であることに留意してください。例外は(ウ)の出張手当(その旅行について通常必要であると認められる部分の金額)です。所得税が非課税である出張手当の金額は、消費税法上課税仕入れに係る支払対価として扱います。この出張手当を経理仕訳で給与手当とした場合、多くの会計ソフトプログラムは不課税取引として仕訳します。この場合は仕訳毎にマニュアルで課税仕入に変更する必要があるでしょう。
2. 立替経費
(ア)業務遂行上必要なものなので、本来は会社が購入し従業員へ提供するものであるが、場所や時間的な理由から従業員が会社に代わって立替払いするもの。
(イ)例えば、電車代、タクシー代、現場消耗品の購入費、研修費等。
(ウ)月次等定期的に従業員に領収書を添付した立替経費精算書を提出させ、現金又は口座振り込みで精算。
(エ)勘定科目は旅費交通費や消耗品費等。
(オ)そもそも給与勘定を通らない、かつ、実質的に給与の性質を持たないので、所得税、住民税、社会保険料、労働保険料の対象となる余地はありません。
以上