今の税理士を替えたいと思われるには、いろいろな理由があると思います。実際、当事務所にもこの御相談のためにご来所される方は多くいらっしゃいます。
まずは、わたなべ税理士事務所にご相談ください。
そしてご相談の前に、次の「税理士を替えたいよくある理由」をご一読頂ければ幸いです。
当事務所に「税理士を替えたい」とご来所される方の内、話をじっくりと伺って、実際に替えた方が良いのでは…、とその場でアドバイスする割合は、2割程度。残りの8割は、「今の税理士さんともう一度よく話し合われて、それでも改善されないようでしたら遠慮なくまたご来所してくださいね」と助言し、一旦お帰り頂くようにしています。
一旦顧問契約をした税理士を替えることは、想像している以上にエネルギーが必要です。なので、今の税理士さんとの関係を良好に修復できれば、それに越したことはないのです。これは、当職が家庭裁判所で調停委員として家事調停を担当する場合も一緒。調停手続きの最初の段階で、「本当に離婚する必要があるのか」を当事者からお話を伺いながら慎重に見極めます。
「それでも、税理士を替えたい…」とお考えになる方へ、当事務所に実際にご相談があった事例と対応方法をご紹介しましょう(以下では、税理士を会計事務所と表示する場合があります。税理士+職員=会計事務所、のイメージです)。
税理士を替えたい、よくある理由
- 事例1> 報酬が高い
- 事例2> 税理士が高齢で話がかみ合わない
- 事例3> 税理士が威張っている
- 事例4> 那覇の会計事務所へ出向くのが大変
- 事例5> 職員に丸投げ、有資格者が対応してくれない
- 事例6> 税理士の問題解決能力が低い
- 【番外編】> ライザップ税理士を探せ!
- 事例7> 今の税理士と一緒に働きたくない
- 事例8> 社会保険料(税)節約の相談に乗ってくれない
- 事例9> 税務調査対応の経験がない税理士
- 事例10> 税理士がITに弱い(準備中)
- 事例11> 提案がない(準備中)
- 事例12> 商工会、青色申告会は卒業したい(税理士に頼みたい)(準備中)
- 事例13> フットワークが悪い(準備中)
事例1> 報酬が高い
具体的に会計事務所が提供しているサービス、さらにお客様サイドでどれくらい経理をされているか(会計事務所とお客様との業務分担の程度)等々を伺うと、実際のところ、それほど不相応な報酬金額ではないと思われるケースが多いです。
お客様が「報酬が高いのでは」と思われるのは、ネットに氾濫する格安会計事務所の報酬と比較されている場合が多いのではないでしょうか。格安会計事務所は、基本報酬をダンピングして、その他のサービスで追加料金を取るケースが多いようです。あるいは、開業して間もない、どうしても顧問先が欲しい、職員数と顧客数が釣り合わない(手が空いた職員を抱えてしまっている…)比較的規模の大きい会計事務所でしょう。
例えば、大切なご自宅を建設するときにただ安ければよいと思われますか。中古自動車を買う場合に、安ければよいと考えますか。問題は、安いサービスは安いなりに理由があるということです。
それでは、「適正な税理士の料金はいくらなの?」ということになります。当事務所が、お問い合わせのあったお客様にご紹介しているのは、税理士紹介サービス会社が例として示している標準報酬額です。ご参考にしてみてください。ちなみに当事務所では税理士紹介サービスは利用していません。理由は、税理士紹介サービス会社から紹介された案件の場合、お客様から頂く最初の半年程度の報酬は、紹介会社への手数料として支払うため税理士にとっては「タダ働き」、その後も数年間はお客様から頂く報酬の何割かは手数料として紹介会社へ支払い続けなくてはならないからです。
幸い当事務所は無理をしてお客様を獲得する必要はありませんし、仮に紹介会社に支払う手数料があれば、お客様への専門的サービスの向上に振り向けたいと思うからです。
しかし、残念なことに報酬にサービスが見合っていないと考えられるケースも当然あります。「税理士の交代」をお勧めした次のようなケースです。
> 総勘定元帳を作成しない(お客様に提供しない)ケース
> どうひいき目に見ても、確定申告書、付属明細書、決算書等の作成が手抜きされているケース
これは、税務調査や銀行融資、お取引先へ経理状況の説明をする際、また、建設業の場合には建設業許可申請や免許の更新の際に面倒なことになります。
事例2> 税理士が高齢で話がかみ合わない
日本税理士連合会が2014年4月に実施した税理士実態調査によると、税理士の平均年齢は約65歳です。さらに、税理士の年代別割合は、20歳代0.6%、30歳代10.3%、40歳代17.1%、50歳代17.8%、60歳代30.1%、70歳代13.3%、80歳代10.4%となっており、人数構成は60歳代が突出しています。このような税理士の高齢化について皆さんはどう思われますか。
もちろん、年齢を重ねた経験は貴重です。しかし、若手の経営者、IT業界、若い世代をターゲットとしたビジネス、相続に関して相続人が若い場合に、高齢の税理士は対応が難しい、というのが率直な印象なのでは…。
また、税理士も所長席にドンと座って、先生面してアドバイスを出すだけという時代は終わりました。お客様のご希望を実現できることを第一に考え、フットワーク良く動き回ることが大切なのです。
ちなみに私の場合、他の税理士、弁護士、司法書士、不動産鑑定士等のプロフェッショナルと一緒に業務を進めることがありますが、その場合仕事上のパートナーは全員自分と同年代以下です。理由は、高齢税理士等とは話がかみ合わなくて疲れ、フットワークも期待できない。そんな人たちと分かり合うための時間は無駄だからです。ここは仕事なので割り切らなくてはいけません。
そのような理由で、「税理士が高齢で話がかみ合わない」という理由で税理士を替えたいというご相談に関しては、「年の功も大切ですよ。我慢したら如何ですか…」とは当職の場合とても言える立場ではございません(笑)。
事例3> 税理士が威張っている
「毅然としている」と「威張っている」は違います。専門家としての知見、事例を積み重ねた経験によって、時には経営者に毅然と助言をしなければならない場合があります。また、税務調査官から納税者を守るために、毅然として当局に反論をしなくてはいけません。患者さんが自分の病や怪我を治そうとせずに、なにをやってもいつもニコニコ、お薬もお土産みたいにふんだんに出してくれる医師は信用できません。
しかし、「威張っている」は困りものです。そもそも税理士が威張る根拠がよくわかりません。「毅然としている」と「威張っている」は相手方の受け取り方次第であることも否定しません。しかし、やはりお客様に「この税理士は威張っているなあ…」と感じさせては失格だと思います。
私は、「威張る=世間知らず」だと思っています。このような世間知らずな税理士を製造してしまうシステムは、税理士資格取得の過程にも一因があると思います。
いわゆる試験組と言われる難関国家試験に合格した税理士は、その多くは勉強のできる大学を卒業(「頭が良い」と「勉強が出来る」はイコールではありません)し、その間企業や組織に所属しないで、真面目に勉強を続け(合格まで短い人で2年位、長い人では10年以上はざらです)、努力に加え、運が良い人が税理士資格を取得します。 また、税務署退官組は、組織で揉まれてきたために、人柄、見識が優れた方も多くおられます。それでも時々民間の世界とは相容れないものがあるように感じることがあります。
いずれにしても、一度顧問税理士が威張っていると感じてしまったら、相手に「先生、威張らないでください」とはなかなか言えないでしょう。かといって、不快な相手に報酬を支払って我慢するのもおかしな話ですので、どこかのタイミングでお別れするのが良いかもしれません。
事例4> 那覇にある会計事務所へ出向くのが大変
沖縄税理士会名護支部は会員数7名で、面積的には沖縄本島の半分近くを管轄する支部です。税理士を必要とするお客様は、那覇市、浦添市、宜野湾市を含む中南部に集中していることを割り引いて考えても、税理士が少ない地域であることは否めません。ちなみに現在は7名ですが、その昔は2~3名だったようです。
このため、北部の事業主様の多くは遠方の中南部の税理士に依頼しておられるようです。私の知っている限りでは、中南部の税理士は原則としてお客様に事務所にご来所頂いているようです(報酬額にもよるのでしょうが…)。このため、事業が忙しくなると中南部の会計事務所まで足を運ぶ時間が無くなり、困るというご相談が多くあります。
中南部の税理士に依頼を続けるか否かのポイントは、「担当の職員さん次第」です。担当の職員さんが優秀でフットワークが良く、所長税理士とコミュニケーションを十分取っており、定期的に北部を訪問してくれるのであれば、問題は何もないでしょう。事業主様と税理士との面談は、決算及び申告の前後だけで済まされると思います。 税務調査対応、多額の設備投資、込み入った節税、会社の経理体制を整備したいため、税理士がすぐに事業所に訪問できる体制にしてほしい等々、特別な事情がない限りはメールや電話で対応が可能であるからです。
ちなみに、那覇の会計事務所は北部と比較して報酬が割高なのでは…、との声も時々耳にしますが、一概にそうは言えないような気がします。
事例5> 職員に丸投げ、有資格者が対応してくれない
重要な顧客に関しては所長税理士自らが手厚く対応し、それ以外は職員が担当している会計事務所が多いのが現実です。それには二つの意味合いがあります。一つは会計事務所の経営方針、そしてもう一つはお客様に選択の幅をご提供しているということです。
● 会計事務所の経営方針
会計事務所が中堅以上の規模になると、所長が全ての関与先に対応するのは現実問題として困難になります。所長自ら全ての関与先に対応することを方針に掲げる会計事務所は、「小規模高品質」を経営方針とする会計事務所でしょう。ちなみに、わたなべ税理士事務所はこれです。
● お客様に選択の幅をご提供している
会計事務所をご利用されるお客様の中には、「とにかく安く引き受けてほしい」というご要望を持たれる方がおられます。会計事務所もサービス業ですので、お客様の様々なご要望にお応えするのは当然のことでしょう。このような場合は、中堅以上の会計事務所ですとコストが比較的安い職員を担当にして、税理士資格を持つ所長は年に一度面談するスタイルをお客様にご提供することが出来ます。残念ながら、わたなべ税理士事務所は「とにかく安く引き受けてほしい」には現在のところ対応できていません。
上記の整理をしたうえで、次のような場合には税理士を替えることを検討されるとよいでしょう。
> 職員が頻繁に替わるケース。→新しい担当職員さんにまた説明しなければならないことがあり面倒ですね。
> 職員のフットワークが悪いケース。→過剰に担当を持たされて職員さんがアップアップ(-_-;)している可能性があります。
> 職員に質問してもその場で回答がないケース。→専門分野に対して職員に自信がないのでしょう。職員が育っていない証拠です。
> 決算時に面談する税理士のアドバイスが、抽象的な場合や心構え的なアドバイスばかりなケース。→本当に職員さんに丸投げをしています。
> 自分が会計事務所にランク付けされるのは嫌だ。税理士に直接対応してもらいたい。→いつも直接対応するのは税理士、職員はお客様が見えないところで税理士を補助するのみといった事務所に替えましょう。
> そもそも「とにかく安く引き受けてほしい」で顧問契約したのに安くない。→論外です。
「税理士って本当に頼れる専門家なの??」というのが、世間一般の税理士に対する評価なのではないでしょうか。この理由としては次のことが考えられます。例えば病気になれば病院に出向き、医師が直接診療します。また、裁判になれば法律事務所に出向き弁護士と直接打合せをし、一緒に裁判所へ臨みます。飛行機は操縦士免許を持ったパイロット以外が操縦桿を握ることはあり得ません。
ところが、税理士はどうでしょう。ほとんどの会計事務所では、職員がお客様のもとへ定期的に訪問する、あるいは会計事務所へ行っても直接応対するのは職員。所長である税理士有資格者は決算や確定申告時になってようやくお出ましになるというのが一般的な印象なのではないでしょうか。もちろん資格を持っていなくても優秀な職員はおられます。残念なことではありますが、ご高齢の税理士で話がかみ合わない、セミプロ並みのゴルフの腕前を持つ所長先生(私見ですが税理士の仕事を真剣にやるのであれば、ゴルフをしている暇はありません。私が尊敬する税理士はみな専門技能の研鑽に忙しくてゴルフは全くなさらないようです)よりは、実務を熟知している職員さんと話がしたいというケースが多いのもまた事実です。
しかし、医師が手術の腕を上げるのは手術を通じてしかありません。無資格者が手術をすればこれはただの傷害あるいは殺人です(漫画ブラックジャックは漫画の世界でしかありえません)。パイロットが操縦技術を向上させるには飛行時間が重要で、この飛行時間にはシミュレーターでの訓練時間は含まれません。実際に大空を飛行しなければいけないのです。
税理士も同じです。法律(税理士法)で税理士にのみ許されている業務(例えば税務調査の際に納税者に代わって調査に対応する税務代理業務等)を通じて税理士はその技能を向上させます。ですので、どんなに優秀な職員であっても資格がなければ本来の専門家としての経験は積むことが出来ません。この経験に基づいてお客様に日常的に専門サービスをご提供して初めて世間から、「税理士って頼れる専門家だな」という評価を頂けるのだと思います。
事例6> 税理士の問題解決能力が低い
税理士に依頼する「目的」は何でしょうか。税務申告書が作れない、記帳量が多くなってきたので税務書類と合わせて記帳代行をしてほしい、数字や計算が苦手なので代わりにやってほしい、自分で申告をしてきたが税金を多く払っていないか不安。このような悩みを解決したいので税理士に依頼する、といったところでしょうか。
これらのお悩み項目については、法律(税理士法)が定める税理士だけがお引き受け出来る仕事(法定業務)です。少し冷めた表現になってしまいますが、法定業務に関しては平均的な税理士なら普通は問題なく扱える業務であり、個々の税理士としての技術の差はそれほど違わないかもしれません(どの税理士に依頼しても結果はそれほど変わらないということです)。これで十分な方は、なるべく安い料金で引き受けてくれる会計事務所を探すことも一考に値すると思います。
一方、法定業務以外をお望みの場合は前もって税理士の技量や専門、興味等を吟味する必要があります。実はこの法定業務以外の業務が、税理士の問題解決能力に差が出る分野なのです。例えば、「人の採用も含めて経理の体制を整備するとともにIT化を進めてほしい」といったご依頼の場合、過去に一定規模以上の民間企業での組織作り(専門用語では「内部統制」と言います)の経験がないと成果は期待できないと思います。また、信託で贈与や財産管理をしてほしいのに、そもそも信託ってなんですか、という税理士には恐ろしくて依頼する気になりませんよね。
ちなみに具体的な税理士の専門分野や経験の確認方法としては、ホームページでの専門情報の発信をチェックしてみる(HPを開設していない、あるいは開設していても専門情報を発信していないということでは心配…)、実際に事務所を訪ねて専門は何か、どの分野に力を入れているか等を直接尋ねてみる、といったやり方がオーソドックスな方法でしょう。
税理士に専門分野を尋ねることは決して失礼なことではありません。ぜひ遠慮なく税理士本人に依頼事項を具体的にぶつけて頂きたいと思います。問題解決能力が高い税理士(このようなタイプは物言いが厳しいタイプが多いと思いますが悪気はないので気にしないで結構だと思います)であれば、その依頼事項を検討したうえで、引受可能か否か、可能であればリスクの評価と説明をしてくれるはずです。
残念ながら問題解決能力が優れている税理士は同業者の感覚でも数が少ないなあ、と常日頃から感じています。また、個人的な感想になってしまいますが、問題解決能力が高い人≠いい人、のような気がします。その訳を考えてみたところ、問題解決をするためにはゴリ押しの強さであるとか、物事を前に進める強いエネルギーが必要であるからではないかとみています。翻って自分はどうかといえば、問題解決能力が高い人=いい人、を目指しているのですが現実はなかなか難しくて…。
【番外編】> ライザップ税理士を探せ!
ライザップ(RIZAP)は、森永卓郎さんやエド・はるみさんのテレビコマーシャル、そして「結果にコミットする」のフレーズでお馴染みのフィットネスジムです。この「結果」とは筋トレで実現する健康ダイエットです。
もちろん、ただジムに通うだけではダイエットになりません。ノウハウを持ったパーソナルトレーナーのマンツーマン指導の下、経験や科学的根拠に基づいて筋トレ(かなりきついらしい!)し、指定の食事メニューに従うことが「結果にコミットする」の条件です。
ライザップに通うこと、そして税理士に依頼することには次のような共通点があると、私は思います。
> ライザップに通うだけではダイエットできない。=税理士に依頼するだけでは経営は改善しない。
> 週に2回、1回50分のトレーニング=隔月1回、1時間程度の面談(必要な時はその都度電話等で相談可)
> 1日3食きっちり食べて、厳しい食事制限は一切なし。=脱税や違法行為は一切しない。
> 専門家によるダイエットに特化したトレーニングと知識を受けることができる。=専門家による正しい経営方法と手許にお金が残る技を伝授される。
> 今までの自分の「限界」を突破できる。=今までの経営者としての「当たり前」を超えることができる。
> パーソナルトレーナーがあなたのやる気と頑張りをサポート=担当税理士があなたのやる気と頑張りをサポート
ライザップの方程式は、「本人のモチベーション+トレーニングの科学=結果にコミットする」です。
ライザップと従来のフィットネスジムとの最大の相違点は、この本人のモチベーションを高いレベルで継続させるノウハウだと言われています。このようなノウハウを他のフィットネスジムは持っていないので、ライザップの料金は他のフィットネスジムに比べて高くなります。
このことは、経営者が税理士に依頼して自分の事業を筋肉質にすることに酷似しています。税理士に依頼する目的の本質は、この経営者のモチベーションを保つためと言っても過言ではありません。
そこで求められる税理士の役割は、経営者のパーソナルトレーナーになって事業を一緒に筋肉質にすることだと考えています。そこにはもはや従来の記帳代行や確定申告書の作成のみを請け負う税理士像は存在しません。また、経理は税理士に任せておしまいでは、筋肉質な事業を実現することは難しいでしょう。
どうすれば会社にお金が残る経営ができるか。そのノウハウが、税理士それぞれがこっそり持っている、いわば「秘伝のタレ」と言ったものでしょうか。このようなノウハウを持っていない税理士については、今後数年でAIに取って代わられるというのが業界の厳しい現実なのだと思います。
現時点で人気のある税理士は皆この「秘伝のタレ」を隠し持っている筈です。そしてやる気のある顧問先には惜しみなくその技を伝授してくれるでしょう。
「お金が会社に残る経営をしたいのです。厳しいトレーニングは覚悟しています。顧問料も相応にかかることは理解しています。ぜひ当社のパーソナルトレーナーになってくれませんか。」税理士にそう質問してみてください。この問い対して真摯に向き合う税理士こそがライザップ税理士です。
事例7> 今の税理士と一緒に働きたくない
当職も依頼人としての立場で、専門分野ごとに不動産鑑定士、社会保険労務士、弁護士、司法書士等専門家の助けを借りることがあります。例えば、登記案件でどの司法書士に依頼するかの判断基準は案外単純で、「一緒に働きたいかどうか」です。
では、具体的にその判断基準はどのようなものでしょうか。当職の場合は次のようなものです。
皆さんがどの税理士に依頼するかの判断基準も基本的には同じだと思います。特に経営に関する税務、会計、そして経営情報の提供を期待するのであれば、お金儲けについての感覚が経営者と一致している税理士でなければ困ります。お金儲けについての感覚とは「現金を稼ぐこと、その為に寝食を忘れて働き、リスクを取ること」、これを理屈ではなく、本能的にやる感覚です。当職の感想ですが、地方公務員、地方議員、上場企業の管理部門(総務、経理、人事等)、非営利団体の職員の中には、残念ながらこのような人材にはお目にかかったことがありません。
是非ご自分に尋ねてみてください。「今の税理士と一緒に働きたいですか?」。
事例8> 社会保険料(税)節約の相談に乗ってくれない
あなたの顧問税理士さんへ次の質問をしてみてください。「社会保険料を減らす方法はありませんか?」。そして、顧問税理士さんから「社会保険料のことは社労士に聞いてください!」と寂しい対応をされてしまった方は、その顧問税理士交代の検討を始めた方が良いかもしれません。
何故なら、昨今の社会保険料は実質的に「賃金税」の性格を有しており、経営全般に関する事業主の良きパートナーを自負している税理士であれば、コストの一つとして社会保険料をとらえ、その削減に取り組むことは必須だからです。
確かに社会保険は税理士の専門分野ではないものの、財務の観点ではその検討対象と言えます。事業経営に関する最も身近な税理士から、先ほどのような冷たい対応をされてしまっては事業主としてはいったい誰に相談したらよいのでしょうか?社会保険料削減に取り組むことはタブーなのでしょうか?当職はタブーとは考えません。
次の表をご覧ください。
上記の金額は、健康保険料と厚生年金保険料の合計、そして社会保険料の給与等に占める割合です。皆さんはこの数字をどうお考えになるでしょうか。
健康保険については、麻生財務大臣が総理大臣だったときの語録、「たらたら飲んで食べて何もしない人の医療費をなんで私が払うんだ」(2008.11)。皆さんはこの発言をどう思いますか?当職には麻生さんの気持ちが良くわかります。
年金についても、受給開始年齢は次第に上昇。当職が年金をもらえる頃には、受給開始は70歳どころか80歳だってあり得ます。
ちなみに、当事務所のモットーは「手元にお金を残す経営」です。その趣旨は、事業主とその家族だけが金銭的に豊かになるといった単純なものではありません。手元に残ったお金をスタッフの待遇向上、お客様の満足向上のために投資する原資を確保し、さらなる事業拡大に努める、これが「手元にお金を残す経営」の意味なのです。
税理士の中には昨今この課題に積極的に取り組む方も増えてきました。どうぞ安心してください。マーケティング、人事、管理、法務等経営全般の視点で社会保険を取扱うことができるのは税理士だけです。
但し、“節”社会保険料にチャレンジするには、社会保険労務士と税理士との共同作業が不可欠です。その理由は、会計数値のみを考えて節社会保険料スキームを実行してしまうと、従業員の福利厚生やモチベーションの低下、最悪のケースは労使紛争といった想定外の副作用が出かねないからです。
したがって、労務の専門家である社会保険労務士と人事政策を踏まえた綿密な打ち合わせ、そして労務官公署への代行を依頼し、節社会保険料スキームを実行する必要があるのは言うまでもありません。
事例9> 税務調査対応の経験がない税理士
「税理士なのに税務調査の経験ゼロ!?」。にわかに信じ難いとは思いますが、現実にはこのような税理士は数多く存在します。
通常、専業の税理士や国税OBはその属していた組織で税務調査を数十件以上は対応してきています。例えば、税理士試験組は国家試験に合格する前後に税理士事務所に勤務し、その間に担当のお客様が受ける税務調査に関わります。国税OBは調査する側として経験を積みます。
しかし、それ以外は税務調査の経験がない場合があります。「税務調査の対応もしたことがない税理士では頼りないな…」、と思われる方は税務顧問を依頼する際に、「税務調査対応の経験はありますか?」とストレートに質問しても良いかもしれません。
ちなみに、税務調査を納税者本人だけで対応するのは、弁護士なしの警察の取り調べや裁判手続きと同じと言っても過言ではありません。警察も裁判所も誤認逮捕や再審を望んでいるのではなく、事実を知りたいだけの事であり、この点については課税庁も同様だと思います。
税務調査とは一般に、課税庁の側が納税者の納税義務確定のために帳簿等の検査や資料の収集等を行うことを指します。税務調査に当たっての課税庁の武器は「質問検査権」で、税務調査官が納税者及びその関係者に質問し、また関係する物件を検査する権限のことを意味します。税務は事業そのものに広範に関係してきますので、それに関する質問や検査も必然的に広くなります。
また、税務調査手続は国税通則法や実務指針(国税内部のルール)に従って、実体法(法人税法や所得税法等)に照らして極めて厳密に手続きが進行します。この場合、脱税を除いては、事実の認定(何が真実なの?)を巡って全くの白or黒と言うことはまれで、だいたいはグレーゾーンについての専門的かつ複雑な議論になります。
税務調査に和解はないのが通説ですが、実務的には調査の長期化による納税者(調べられるのはストレス!)と税務当局(いつまでも一人の納税者に時間を費やすことはできない!)の負担を軽減するため、諸事情を総合的に勘案して落としどころを探るという「大人の対応」を図ることが税務調査の実態と言っても過言ではないでしょう。そして大人の対応をするためには場数を含めた税務調査に対する十分な経験が必要なのです。
どんな専門家でも最初は未経験者。自分がその専門家のトレーニングの材料になり、その専門家を育てるという考え方もあるでしょう。
しかし、自分や家族が難しい手術を受ける場合に、その手術の経験がない外科医ではなく、多少追加のお金を払ってでも、ベテランの外科医か、少なくともチームで手術のトレーニングを受けた外科医にオペを頼みたいのが人情なのでは。
当職はといえば、未経験外科医によるオペはご勘弁。当職、怖がりなもので…。