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電子申告本格運用のお知らせ

 税に関する手続きについて、当事務所でも遅ればせながら本格的に電子申告を開始しました。「電子申告は税務書類の提出手段の一つに過ぎない…」と高を括っていたのが正直なところですが、税理士事務所経営者としては、事務の簡略化メリットを感じます。その一方、本人申告をされている個人事業主や法人の方にとってはメリットを感じられないのでは、というのが正直な感想です。

 その理由は、一年に一回申告をする納税者にとっては、専用ソフトのインストール、認証カードリーダーの購入、マイナンバーカードの取得(今のところ取得率は10%程度だそうです…)、そして、大分簡単になったとはいえ専用ソフトに慣れる必要があるという高いハードルを越えなければいけません。実際問題として、専用ソフトに慣れないと「本当に申告できたのだろうか…」という心配が付きまとい、心配性の方は念のため紙でも申告しておくというようなことになりかねません。
 一方、税理士事務所のように電子申告を業務として反復継続的に行う事業者にとっては、申告書の製本と提出の手間を大幅に削減することができます。当事務所でも、従来スタッフが担っていた提出部数分の印刷及び確認、事業主、経理担当者、そして税理士の押印(真面目?に押していたら腱鞘炎になります)、税務署、都道府県税事務所、そして市町村税務課へ申告書及び届出書提出業務が消滅しました。

 しかし、当職にはこのような電子申告による利益を税理士が一方的に享受して良いものか、という問題意識もあります。この点、税務について有償独占のみならず無償独占権をも有する税理士は、「従来、料金の問題で税理士を利用できなかった本人申告納税者のお手伝いができないか」という課題に真剣に取り組む必要があるのではないでしょうか。
 具体的には、申告事務の定型化と受託業務範囲の限定(節税指導の省略等)によって報酬の引き下げを図り、どなたでも比較的安価に税理士申告サービスを利用してもらうという「商品開発」です。これについて、当事務所では現在鋭意努力中ですので今しばらくお待ちください。

 日本の税務原則は申告納税制度です。この制度は納税者自らが法律に従って税額を計算して申告する「国民の権利」と言っても良いでしょう。したがって、申告の煩雑さについて税務署等にクレームし、権利放棄をすることはそもそも筋違いなのですが、現実問題として、今日では税法は複雑になる一方です。その上、貴重な相談の場であった無料申告会場も縮小され、申告事務の相談を受ける税務署職員の数も削減…。申告時期には半日待ちの長蛇の列が税務署の寒い廊下や階段に伸びる…、という光景が近年顕著になりました。確定申告業務の効率化、それによる業務原価削減については、我々税理士にとっても待ったなしの課題です。