平成28年度税制改正大綱に加算税制度の見直しが記載されました。
国税に関する一般法である国税通則法には、加算税として過少申告加算税、不納付加算税、無申告加算税、重加算税が規定されており、今回の税制改正関連法案ではいずれについても改正が予定されています。
ここでは、過少申告加算税について、その改正の背景と具体的な改正内容を解説します。
【改正の背景】
近年税務調査に関する法律が整備され、税務当局に対する「税務調査の事前通知の義務化」が実現しました。税務調査はその運用によっては国民の財産権の侵害リスクを生じさせます(真面目に税務申告を行っているのに、突然税務調査官が自宅や事業所を訪れ、調査を始められたら納税者は困ってしまいます。ですので、原則として税務調査に着手する前に納税者本人、あるいは顧問税理士がいれば顧問税理士に調査の事前通知を行うことが平成25年1月1日以降に開始する調査から税務当局に義務付けられました。)ので、手続規定を法令で整備し、税務調査の運用に対する一定の歯止めをかけたことは納税者にとっては歓迎されることでしょう。
一方、この「税務調査の事前通知の義務化」を利用して、事前通知日と調査着手日の間に修正申告書を提出し、過少申告加算税、つまり罰金を免除される事例が散見されるようになりました。現行法では税務調査着手前に自ら修正申告すれば過少申告加算税は課されないからです。
カラクリはこうです。税務調査は必ずしもすべての申告に対して実施されるわけではない(ここがミソ!)ので、当初の申告では税額を故意に低く申告し、税務調査の事前通知があったら調査着手日までに修正申告書を提出し、その結果罰金が免除されるということ。これでは、当初の申告で正直に申告している納税者との平等性が保てないと言われても仕方ないでしょう。
【具体的な改正】
そこで平成28年度税制改正大綱では、「事前通知後更正決定を予知する前にされた修正申告」について5%(期限内申告額と50万円のいずれか多い額を超える部分は10%)と改正案が記載されました。つまり、事前通知日以降の修正申告による増差税額には、最低5%の過少申告加算税が課されることになる予定です。
今回の改正案はすべての国税に適用され、とりわけ解釈や財産評価いかんで税額に大きな差が生じがちであり、また法人税や所得税と異なり一度の申告である相続税申告の際に注意が必要と考えられます。また、今回の加算税強化案は、相続税申告中の「名義預金」に関する申告漏れの多さが改正の引き金になったとする一部報道もあります。
尚、上記の改正は税制改正関連法案が成立すれば、平成29年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税について適用されます。